インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

“便宜”を貪る人たち

Twitterで武田砂鉄氏がこんなツイートをされていました。

このお気持ち、すごーくよく分かります。私も先日確定申告を済ませ、クレジットカードで少なくない税額を振り込んできたんですけど、正直「あんなに公文書や統計の改竄が行われているってのに私ったら……」という気持ちがこみ上げてきました(まあ、あれはあれ、これはこれ、なんですが)。

でも人に「バカ正直」と言われても、結局は「天網恢恢疎にして漏らさず」的な意味で、嘘をつくのが気持ち悪いので「ちゃんとやってしまう」んですよね。”中国語には“貪便宜(tān piányi)”という言葉があって(“天網恢恢疏而不漏”だってもともと中国語ですけど)、「目先の利益をむさぼる」とか「甘い汁を吸う」といった意味なんですが、そういうのがイヤなのです。

“貪便宜”というのは、何というのかな、とっても「セコい・小ずるい」感じのする言葉です。そんなところで安易に得しようとするなんて情けないじゃないか、お天道様に顔向けができないんじゃないかという感じ(あくまで私的な語感です)。これはもう一種の信仰みたいなものだと思うんですけど、武田砂鉄氏おっしゃるところの国民に嘘つきまくっている人たちって、そういう信仰がないのかな、天に恥じるということがないのかな……と思います。

かなり昔のことですが、中国の友人に「中国は上がしっかりしていて下がいいかげんだけど、日本は下がしっかりしていて上がいいかげん」と言われ、う〜ん、そうかなあ、とにわかには頷けませんでした。そんな十把一絡げに言われてもね。でも昨今の状態は……中国はずいぶん変わったような気がするけど、日本では確かにそうかもしれないですね。

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https://www.irasutoya.com/2015/05/blog-post_51.html

先日、共同通信世論調査結果が発表されていました。沖縄県の、普天間基地辺野古移設をめぐって七割以上が反対した県民投票後初の結果ですが、安倍内閣の支持率は43.3%とほぼ横ばい。直前に景気動向指数が後退局面に入ったのではないかと、各種の統計疑惑に続いてまたまた怪しい材料が飛び出した直後の調査でもこの数字です。

「いいかげんな上」にまだこれだけの支持が集まっているのも不思議ですけど、でもお仕事で企業経営者などの本音を側聞したり(守秘義務があるので詳しくは書けませんが)、金融の学校に通ったりして感じる空気から思うのは、なんだかんだ言って富裕層やそこにつながる層の少なからぬ人々が、安倍内閣と日銀の経済政策を歓迎していることです。アメリカのトランプ大統領だって、あれだけ「倫理面、知性面などから不適格(ペロシ下院議長)」などと言われながら、インフラ投資や減税などの財政政策は株価を押し上げる方向に力が働いていますよね。

要するに、リベラル層が俎上に載せている各種の論点など、お金儲けの前にはかすんでしまうんですかね。本来なら国家の政策も投資も長期的な視点や大局観が必要なはずですが、いまの政財界、特に日本には、そんな「大人(たいじん)」は少ないように感じます。すでに国家としては横ばいないし衰退期に入って余裕がなくなり始めているとも言えそうですけど。

それにしても、武田氏おっしゃるところの「国民に嘘つきまくっている人たち」には、そんなこと続けているとろくな死に方をしませんよ、と呪詛の一つもつぶやきたくなりますね。