インタプリタかなくぎ流

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バビブベボナさん

異色のお菓子レシピ本です。著者である樋口正樹氏の愛猫で、フランス語の「ボナペティ(よい食欲を→召し上がれ)」から名づけられた「ボナさん」。そのお友達という設定で、「バビブベボ」から始まる名前のお菓子が次々に登場し、ボナさんと戯れ、その「交友関係」が綴られていきます。


バビブベボナさん おいしいお菓子のお友達

いわば、お菓子のレシピ本であると同時に、ボナさんの写真集でもあり、詩集のような趣きもあり、世界各国の素朴で珍しいお菓子の一覧にもなっているのです。しかもバビブベボの「バ行」つながりで、お菓子作りに欠かせない「ブレンダーさん」や「バターさん」まで登場するという遊び心。

グレーの毛並みにまん丸な顔。つぶらなオレンジ色の瞳がかわいいボナさんは、そうしたお菓子のお友達に興味津々のように見え、時に手まで出しているのですが、実は人間の食べるお菓子には全く興味がなく、いつもは「カリカリ」七割、「ウェット」三割のペットフードで暮らしているそう。

つまりこれは徹頭徹尾、著者氏の妄想全開で成り立っている本なのですね。ボナさんはその妄想につきあって、時にそれぞれのお菓子の雰囲気に合わせたコスプレまでして(させられて)写真に収まっています。かわいい。かわいすぎる。しかも出てくるお菓子がまたいちいちかわいい。

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特別な材料を極力使わず、簡単に作れるよう工夫されたレシピも秀逸で、休みの日につい作っちゃえるような手軽さも兼ね備えています。手に取ったときは一瞬「猫用おやつのレシピ集かしら」と思った、その誤解を招きそうなつくりもまた面白く、かわいい。こんな本が登場するくらい、やはり日本のレシピ本は楽しく奥が深いです。