インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

留学生と原稿用紙

仕事で留学生の作文を添削することがあるのですが、原稿用紙を使って書く際に、拗音や促音をこんな感じで一つのマス目に入れちゃう方がけっこういます。数えているわけではありませんけど、個人的な感覚ではこういうふうに書く方は全体の半分くらい、という感じ。しかも洋の東西を問わず、です。

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拗音は、これは五十音を学ぶときにも一つの「拍」で捉えたりするので(たとえば「や・ゆ・よ」と同じように「きゃ・きゅ・きょ」と)、一つのマス目に詰め込んで書いちゃうのも分からなくはありません。でも促音は、小さな「っ」も拍で捉えるので(たとえば「きっと」だったら「き・っ・と」)、マス目も三つ使って書きそうなものですが、やはり上の写真のように書く方が多いんですよね。

日本語教育専門の先生にうかがったら、学校にもよるけれど、拗音も促音も、書き方はこんな教材を使うなどして、きちんと教えるんだそうです。

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ということはつまり、原稿用紙を使った作文を教わったかどうかの違いということですかね。そしてけっこうな数の留学生が拗音や促音を一つのマス目に詰め込んで書いちゃうということは、昨今の日本語学校では原稿用紙を使った作文はもうあまり教えなくなっているということなのかな。

あと面白いのが、台湾出身の留学生が原稿用紙で作文をすると、句読点をマス目のど真ん中に打つ方が多いです。これは台湾の正書法(といっていいのかどうか分かりませんけど)がそうなっているからですよね。私も台湾で仕事をしていた頃は公文書などでそのスタイルをよく見かけました。

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また中国語圏の留学生は、段落の文頭を「二文字あけ」にする方がかなり多いです。これも中国語の文章では一般的にそれが正式だとされているからで、日本語では「一文字あけ」だということをきちんと教わったことがないからなんでしょうね。

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まあ、いまはソフトやメールなどで文章を書くことがほとんどの時代です。メールでは段落の「一文字あけ」もしないことがほとんどでしょうし、そもそも原稿用紙で書くということそのものがかなり廃れてきているので、こういった現象も仕方がないのかなと思います。でも、入試や入社試験などでは(少なくともこの国では)まだまだ原稿用紙で書かせるところもありますから、できればきちんと知っておくに如くはなし……ということで、こうしてせっせと添削しているのです。