インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ZOZOの社長にぜひ能面を買っていただきたいです

先般、ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOの社長、前澤友作氏が1717年ストラディヴァリウスのバイオリン「Hamma(ハンマ)」を購入したというニュースが流れていました。

www.huffingtonpost.jp

購入金額は明らかにされていませんが、こちらの記事によるとストラディヴァリウスのバイオリンはいずれも一挺十億円規模の価格がつくそうです。

toyokeizai.net

この購入を巡って、ネット上では「金持ちの道楽」とか「それだけのお金があれば他の有意義な事業に寄付すべき」などといった意見が散見されました。私は、まあ自分のお金をどう使おうがその方の勝手だと思いつつも、前澤氏が他にも高額の美術作品などを蒐集していることから、今回もまたそうした美術品所有欲の成せるわざなのかなと漠然と考えていました。

ところが、お能の師匠にうかがったところによると、こうした名器と言われる楽器を富豪が所有するのはわりとよくあることなのだそうです。しかも所有した富豪がそれらの楽器を演奏家に貸し出すことで、名器が単なる金持ちの個人的な趣味で死蔵されることを防ぎ、金銭的には厳しい状況にある若手の有能な演奏家にも名器に触れる機会を与えることになると。

前澤氏も上記の報道で「今後、このストラディヴァリウスを世界中ぐるっと旅させます」とコメントし、「現地の音楽家の皆さまにもご協力いただきながら、その国や地域の子供たちの耳に、この力強くも繊細な奇跡の音色を届けていければと思います」としています。なるほど、音楽芸術に関して真っ当な見識を持った方が名器を所有すれば、よりその楽器の存在価値は高まるということですね。

そして師匠は、この仕組みをお能の「面(おもて)」にも取り入れることができればいいのに、とおっしゃっていました。能楽において「面」はとても大きな意味を持つ存在で、これなしには能楽が成立しません。しかも楽器の名器同様、古くから伝えられた伝説的で貴重な「面」がたくさんあるものの、それらのほとんどは各流儀ごと、あるいは能楽師や収集家の個人所有が多く、市場に流出していて散逸の危険性があるものも多いとのこと。

こうした「面」は優れたものでもせいぜい数百万円単位だそうで、バイオリンの名器に比べれば桁がずいぶん少ないです。師匠は、そうした散逸の危険にさらされている「面」を能楽に造詣の深い資産家が買い取り、ストラディヴァリウスと同様これはと見込んだ若手能楽師に貸し出すというような仕組みができればいいのに、とおっしゃっていたのです。なるほど、そうなれば資産家は貴重な作品を所蔵でき、能楽師は貴重な「面」をつける機会ができて芸の励みになり、「面」自身の散逸も免れることができます。

前澤氏はいまのところ、時計とか絵画とか自動車とか飛行機とか月旅行とかプロ野球球団とかにご興味があるようですが、ぜひどなたか周囲の方が、日本の伝統芸能、とりわけ能楽へと引きずり込ん……いえ、お誘い申し上げていただけたら幸いです。

ZOZO前澤友作の高額購入品と所持品リスト!社長さんのお買い物! | EATalk

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https://www.irasutoya.com/2017/12/blog-post_923.html