インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

女子会にひとり混じるのが楽しい

忘年会シーズンです。が、ここ数年はほとんど忘年会や新年会のたぐいに参加しなくなりました。私が人付き合いの苦手なあまのじゃくだからじゃなくて、仕事関係で忘年会に呼ばれることがほとんどなくなったのです。これは全くエビデンスのない妄想ですが、語学業界の方々ってどちらかというと一匹狼的にゴーイングマイ・ウェイでエキセントリックな方が多いような気がします。だから普通の組織みたいに連れだって会食に行き盛り上がるのが苦手なのかもしれません。

とはいえ、いま一番多くの仕事をこなしている某専門学校では、先日忘年会が開かれました。学校全体の教職員ではなく、私が所属している研究室の教員五名だけのささやかな会です。私以外は全員女性で、私が幹事役になって銀座某所のビストロを選びました。

言うなれば、いわゆる「女子会」にむくつけき男が一人だけ混じるようなものです。話が合わないんじゃないか、「女子」の方だって「黒一点」の取り扱い方に困るんじゃないかと思われるでしょうか。それが私、こういう会食がいちばん楽しいんです。以前勤めていた会社で男性の同僚に「女性ばかりの会に一人で参加するのが楽しい」といったら「そんな『アウェー』はありえない」と驚かれました。

でも、私にとっては例えば男性のみ五人の会食とか飲み会の方がもっと「アウェー」です。だって話が合わないんだもの。2018年の現在では男性の生態もずいぶん様変わりしていると思いますが、少なくとも私くらいの世代の男性って、会食や飲み会になると仕事の話かスポーツ(プロ野球とかサッカーとか)の話か、はたまたちょっと際どい話題がメインで、私はそういうのに昔から全然興味が無くてついていけないのです。

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https://www.irasutoya.com/2015/03/blog-post_641.html

あと、女子会で行われる会話を仔細に観察していると、話題が実に豊富で、かついい意味で(?)深まらない。脈絡がないと言ってもいいですけど、ちょっとしたきっかけで、いやちょっとしたきっかけさえなくいきなり話があちこちに飛んでその刹那刹那で「わあっ」と盛り上がって笑いこけるんですね。私はこういう方が肩肘張ってなくて好きです。

私は細君と話していて、彼女があまりにも脈絡無くあれこれの話題にポンポン飛ぶので、よく「なんでその話題になったの?」とか「さっきの話とどう繫がってるの?」的なクエスチョンを出すんですけど、細君は「いいの。私の頭の中では繫がってるの」といいます。どうやら、いろいろ頭の中で考えていることがときどき声になって出てくるといったふうなんですね。

最初はなかなか慣れなかったんですけど、次第にこういう間欠泉的な発話につきあうのもなかなか面白いと思えるようになりました。よく言われることですけど、要するに「質問の答えを求めてはいない。ただ話を聞いて反応してほしいだけ」なのかもしれません。いや、こう言い切っちゃうと、もはや何を言われても「へえそう。そうだねえ」ばかり返しているみたいで却って「バカにしてんのか」って感じですけど。

とにかく、女性ばかりの会での会話は「これこれこうなんだよ」→「ふうん、そうなのか、そうだねえ」というちいさな傾聴と共感がさざ波のように寄せては返すってのが心地いいんですよね。

男性のみの会食でも「バカ話」は多いですけど、なんというのかな、現今の芸人さん文化に影響されすぎなのか、とにかく誰もが「ウケを狙う」というか、面白いことや鋭いことを言わないと負けみたいな、一種競うような雰囲気があって、私はあまり馴染めないんです。……まあ一般化はできないと思います。私のこれまでの職場でおつき合いのあった男性にたまたまそういう方が多かったというだけのことかもしれませんけど。

そういうことを公私ともにいろいろな場所でつぶやいていたら、取材されて記事にもなりました。これはもう十年以上も前ですけど、当時から私は男性だけの会が苦手でした。今でも苦手です。

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ただし、女子会に一人参加する「男子」として、ひとつだけ気をつけていることがあります。それは理屈をぶつ傾向がすぐに頭をもたげるので、なるべくそれを抑えるということです。特にお酒が入って饒舌になるタイプの私みたいな男性は危ない。いわゆる「マンスプレイニング」的に語り出す危険性があるんですね。

今回のビストロでの忘年会でも、私が「昔取った杵柄」で分厚いワインリストからあれこれ選んでいるうちにこの「マンスプレイニング」的な傾向が頭をもたげて、つい語り出しそうになって「いかんいかん」と思いました。いや、ちょっと語っちゃったかもしれません。申し訳ないです。

でもまあ女子会特有のとりとめもない(褒めてる)楽しい会話で三時間ほどはあっという間に過ぎ、銀座四丁目の交差点でそれぞれが乗る電車の駅に向かって別れる際にハグまでして帰ってきました。男子会で最後にハグまでして別れるなんて考えられないから、これも女子会で幸せな気分になれる理由のひとつ……いや、昨今の男性諸君はハグくらいするかもしれませんね。