インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「どゆこと?」を生まないシンプルさがほしい

先日、都営大江戸線新宿駅改札を通りかかったら、東南アジアからと思われる観光客のご夫婦に遭遇しました。券売機の前で困ってらっしゃる様子だったので、簡単な英語でお手伝いしたのですが、確かにこれは困るでしょうねえ、と思いました。

お二人は地下鉄の「ワンデーパス」を買おうしていたようです。券売機で英語表記を選べるところまではよかったものの、東京メトロ都営地下鉄でパスが分かれていて、なおかつ双方乗れるパスもあり、都合三つの選択肢があるので「どゆこと?」と戸惑っていたのです。確かにこれ、東京の地下鉄事情をご存じない観光客には分かりにくいですよね。

さらに、お話ししてみると最初はPASMOを買わなきゃいけないと思ったそうで、PASMOの購入画面に進むも、記名式と無記名式の選択肢があってこれも「どゆこと?」と。で、うっかり記名式に進んじゃって、個人情報(氏名、生年月日、性別、電話番号)の登録を求められ、さらに「どゆこと??」となったよし。確かにこれも分かりにくい。

f:id:QianChong:20181218153941p:plain:w400
https://www.pasmo.co.jp/tc/buy/

もっとシンプルな仕組みにできるといいなと思いました。例えば台湾にも、PASMOに似た「悠遊卡」などのチャージ式カードがありますが、買って、チャージして、使うだけ、と極めてシンプルです。地下鉄(MRT)以外にコンビニでも使えますし、使い勝手はPASMOとほぼ同じですが、外国人が購入して使うという点で入り口の敷居が極めて低い。というか、チャージ式プリペイドカードとは本来そういうものであるべきでしょう。それ以上でも以下でもない。なのに日本のそれは初手から外国人にも記名式と無記名式を選べるよう提示してきて、これはこれで「おもてなし」なんでしょうけど、複雑ですよね。

またこちらは外国人観光客向けに配布されているPASMOのパンフレットですが、初めて来日した外国人観光客になったつもりで読んでみていただきたいと思います。そのあまりの複雑さに恐怖さえ覚えるのではないでしょうか。

f:id:QianChong:20181218155012j:plain
f:id:QianChong:20181218155024j:plain
https://www.pasmo.co.jp/tc/pdf/guide01.pdf

路線図にしたって、確かに首都圏の交通網はこの通り超弩級に複雑なんですけど、ここまで余すところなくすべて載せる必要があるでしょうか。ましてや今はグーグルマップなどで路線検索ができる時代だというのに。これを言っちゃ身も蓋もないかもしれませんが、このようなパンフを作るよりも無料Wi-Fiなどスマホの通信環境を充実させる方がよほど喜ばれると思います。

様々な選択肢を豊富に用意するのが日本流「おもてなし」だとすれば、それはひょっとすると大きな勘違いかもしれません。くだんの東南アジアのご夫婦も、結局はPASMOをあきらめて紙の「ワンデーパス」を購入されたのですが、最後に「領収書は要りますか」というボタンが出てきたので押したら、ワンデーパスと同じ色と大きさの領収書が出てきて(つまり機械から同じような紙が二枚出てきたわけです)またまた混乱されていました。

領収書まで発行してくれるなんて、とても日本的らしい細やかな「おもてなし」かもしれません。でもその細やかさが逆に「どゆこと?」という混乱を生んでいるような気もします。日本には日本の事情がありますし、台湾など諸外国の公共交通機関と東京の複雑怪奇な鉄道事情を一緒に語るのもやや乱暴かもしれませんが、日本人がよかれと思って細かく作り込んでいる「おもてなし」は、実はそんなに素晴らしいものではないのかもしれない、と思わされた一件でした。

追記

……というようなことをブログに書いていたら、ネットでMay_Roma(めい ろま)氏のこの記事を読みました。おっしゃるとおりだと思います。

cakes.mu