インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

総合週刊誌の広告に眩暈を覚える

今朝の新聞を読んでいたら、紙面の下三分の一ほどを占めるスペースに『週刊ポスト』と『週刊現代』の広告が載せられていて、眩暈を覚えました。

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縦横に交錯する大量の見出し文字に眩暈を覚えたというより(まあ、それもありますが)、その見出しの内容に、そして小学館講談社という全く異なる出版社から出ている雑誌の広告作りがきわめて似通っていることについてです。この広告を外国の方に見せて「これ、なんだと思う?」と聞いてみたら面白い議論になるかもしれません。

こうしたいわゆる「出版社系総合週刊誌」って、私は若い頃一時期買って読んでいたこともありますが、ここ数十年はほとんど読んだことがありません。読むのは、定期的に歯の健診で通う歯科医での待ち時間くらいかなあ。扇情的な書き方の記事を読む気がしないのもさることながら、記事の多くが都会の大企業に勤める男性向けで、私のような人間には「お呼びじゃない」内容が多いからです。

Wikipediaでは「総合週刊誌」の特徴がこのようにまとめられています。

総合週刊誌の多くはB5版かA4版の大きさで、グラビアページと文章記事ページで構成される。内容は、政治・経済・芸能・スポーツ、社会事件を題材にした批判記事、ルポルタージュが中心である。著名な作家の連載小説、エッセイ、漫画(時代小説原案のものや劇画が多い)、ゴルフ技術情報なども掲載される。

なるほど、確かに『週刊文春』や『週刊新潮』はそんな感じで、いまでも例えば「文春砲」などが一定のジャーナリズムを発揮しているみたいですが、上掲の、今朝の新聞に広告が載っていた二誌は、もはやこのWikipediaによる「特徴」にはおさまっていないですよね。

「頻尿」
「老親が死亡」
「がんで死にたい」
「安心して、さよなら」
「治療にかかる総費用」
「多剤服用はこんなに怖い」
「冬の風呂場で死んだ60代」
「夫婦で老人ホームに入りたい」
「死に装束を考えるのが楽しくて」
「あなたが突然逝ってしまったら」
「資産を『ラクして殖やす方法』」
「リハビリ中でも楽しめる旨くて体にいい食事」……

む〜、総合週刊誌というより、老後の生活マニュアルというかご相談コーナーというか。団塊世代の男性が主たる読者層で、その読者と一緒にこの二誌もここまで変容してきたというのがよく分かります。

しかも相変わらず「必須アイテム」として盛り込まれる「ヌード&セクシー」や「袋とじ」。電車の中吊り広告やスポーツ紙・夕刊紙にもいまだに盛り込まれ続けるこれらも、ええかげんにしなさいと私など思うのですが、需要があるゆえの供給なのか、いっこうに無くなりませんね。

なんかもう終末感たっぷりで、斜陽産業だなあとしか思えないこうした総合週刊誌ですが、内部事情をよく知る細君の友人によると、これでもまだ両出版社にとってはけっこうな稼ぎ頭なんだそうです。「エッチな雑誌作ってる部署は儲かってんのよ」って。なるほど。

それにまあ、変容しまくっているとはいえそこは大手出版社が編集して世に出している雑誌です。玉石混淆というか「石」の方が圧倒的に多いネットに氾濫する情報よりは、団塊世代のおじさまたちにとってある種信頼できる心の拠り所を与えてくれるのでしょう。

私もあと二十年ほど歳を取ったら、こういう雑誌に心の拠り所を求めるようになるのかしらん。まあその前にこうした雑誌がなくなっているかもしれませんが、私はできればこういう直裁的で扇情的な情報の数々にではなく、文学や音楽や美術などの作品にこそ「老後に寄り添う」役割を求めたいです。