昨日は某台湾アイドルさんたちのファンミーティングで通訳のお仕事をしてきました。
以前台湾エンタメの字幕翻訳をしていた関係で、時々「ファンミ」の通訳を仰せつかるのですが、なんというのかいつも「私みたいなオジさんが出ていっていいのかしら」的違和感……じゃないな、一種の場違い感を払拭することができません。
だってアイドルさんたちはとってもキラキラと輝いていて、ファンの方々も憧れの人を直接目にするということでこれまた目をキラキラさせてらして、とっても華やかな雰囲気なのです。しかもファンの方々は私の百倍、いや千倍はそのアイドルのことをよく御存知なのです。そんな中、スポットライトのあたる舞台でアイドルさんたちのそばについて当意即妙な「互動(司会者や観客とのやりとり)」を通訳するというこの「アウェー感」といったら。
でもまあこれはいつも申し上げている「常にその現場で一番の門外漢でありながら、その門外漢が一番前に出て二つの言語で専門的な内容を話す無理筋」という通訳者の宿命ですかね。
今回のファンミは現在日本でも放映中のドラマのプロモーションも兼ねていたので、仕事の前にドラマ全話を毎日少しずつ、合計数十時間かけて視聴しました。「あのシーンのあの演技が……」などという話になった場合に(というか、ファンミではそういう話題がほとんど)ついて行けない可能性があるからです。
またご本人のお名前と愛称の中国語と日本語での読み方(日本語は基本その漢字の音読みですが、イングリッシュネームなどで呼ぶことも多い)、ドラマでの役名(日本のマンガが原作だったりするとけっこうややこしい)と人物関係、そのほかにプロフィールやドラマなどの出演歴(特にドラマの題名は原題と邦題がかけ離れていることが多いのでこれも鬼門)、ディスコグラフィー、さらには InstagramやFacebookなどに投稿されている近況もチェックします。
また過去のインタビュー記事や動画などを可能な限り渉猟して(同じようなことを話される可能性が高いから)、「にわかファン」になって本番に臨みます。それでも抜け落ちている情報はあって、当日パートナーさんに教えていただいて初めて知った情報もありました。
その一方で予習が功を奏した部分もあって、例えばファンミに先立つ雑誌の取材で「好きな韓国ドラマの俳優さんは?」という質問が出たのですが、「宋慧喬(Sòng Huìqiáo)さん」という中国語の音からすぐに「ソン・ヘギョさん」を引き出すことができてなんとか事なきを得ました。とあるインタビューで、そのアイドルさんが同じ質問をされていたのをたまたま読んでいたからです。こういうのはいつも冷や汗をかきます。ファンの方なら自明のことでも、我々門外漢には一撃必殺な言葉なのです。
ただ、こう言っては語弊があるかもしれませんが、本当のファンではないからこそ、冷静に通訳ができるということもあるかもしれません。もし本当のファンだったら、憧れの人を目の前にして、訳すどころじゃなくなってしまうでしょうから。「ファンミのお仕事なら、サインもらえたり、一緒に写真をとってもらえたりしていいですね」と言われることがあるのですが、わはは、お仕事なのでそんなことはあり得ません。華やかなステージの裏ではそれぞれのスタッフが黙々とお仕事をこなしているだけです。