インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

小手先の技術に頼らない

学校の文化祭で披露する留学生の日本語劇、今週末の本番を前に、実際の舞台(といっても教室を利用した簡素なものですが)でゲネプロ(本番と同じように舞台で行う通し稽古)が始まりました。この期に及んでまだ台詞がうろ覚えという人もいますが、だんだん動きや感情も伴った演技ができるようになってきました。

ところで毎年、舞台の仕上げというこの段階になると気づくことがあります。それは留学生のみなさんが「小手先のウケ狙い」に走ろうとすることです。それまではなかなか恥を捨てきれず、人前で台詞を喋ったり、ましてや喜怒哀楽を身体全体で表現したりすることがなかなかできない、つまり「役に入りきれない」方が多いのですが、この段階になってだんだん吹っ切れてくると、今度は逆にウケを狙おうという欲が生まれてくるのです。

やる以上はウケたいという気持ちは十分に分かるのですが、それらの狙うウケは往々にして「内輪ウケ」であったり「独りよがり」であったりします。やっている本人たちは盛り上がっているのですが、見ている観客は逆にしらけてしまう。これが少々怖いところで。こんなとき、私たちはもう一度原点に戻るよう呼びかけます。

そもそもこの課題は「パブリックスピーキング(人前で説得力のある話し方)をする」あるいは「他人に聞きやすく分かりやすい声を届ける」ために、活き活きとした日本語の音声訓練をするというのが主軸です。留学生による文化祭の出し物だからと平易な日本語で「お遊戯」をするのではなく、逆に容赦のない本格的な大人の日本語で(そこには上品な言葉も、逆に下卑た言葉も、さらには流行語や方言なども含まれます)大量の台詞を正確に喋り倒す。堂々とした説得力のある日本語を駆使して観客を圧倒することで感動をもたらしたいのです。小手先のウケ狙いなどには走らず。

確かな基礎技術が培われないうちに、小手先の表面的な技術でウケを狙っても、受け手には薄っぺらい印象しか伝わらない――これはたぶんどんな分野にも通じる道理じゃないかと思います。例えがあまり適切じゃないかもしれないですけど、ほら、ときどき小手先のアイデアは満載で「凝り凝り」なんだけど、ちっともおいしくないラーメンってあるじゃないですか。あんな感じです。

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▲『ラーメン発見伝』第20巻より
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というわけで、いよいよ今日は最終リハーサル。明日と明後日が本番です。留学生のみなさんが、小手先の技術に頼らない「ど真ん中・王道」の日本語で観客を圧倒して、なにがしかの達成を感じてもらえたらいいな。健闘を祈ります。

D館の「D38a」教室です。

  世界三大料理 ベタ禁止法
11月2日(金) 13:30/14:30 13:00/14:00
11月3日(土) 11:00/13:30/14:30 10:30/11:30/13:00/14:00

http://www.bunka.ac.jp/contents/2018bunkasai.pdf

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