インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

フィンランド語 28 …地名につく場所格

場所を表す格語尾は、これまで三種類学びました。

内格 ~ssA ~に/で
出格 ~stA ~から
入格(語尾はさまざま)~へ

これらを使うと、例えば「~で~します」とか「~から~へ行きます」のようなことが言えそうです。旅行の時などに使えるかもしれません。教室の練習で使った動詞は以下の三つです。

olla ~に/で いる
tulla ~から くる
mennä ~へ いく

例えば「Suomiフィンランド)」なら、「Suomi」は「i」で終わるフィンランド語由来の単語なので語幹は「Suome」、それにそれぞれの格語尾がつきます。

(Minä) olen Suomessa. 私はフィンランドにいます。
(Minä) tulen Suomesta. 私はフィンランドから来ました。
(Minä) menen Suomeen. 私はフィンランドへ行きます。

ところが、場所を表す名詞の中には「~ssA」や「~stA」などが使えない例外があるそうです。そういえば「Venäjä(ロシア)」は「ロシア(の中)で/に」と言うときにも「~ssA」が使えず、「Venäjällä(ロシアの上で=の中で)」としか言えないんでした。これと同じですね。こういう例外は、地名でも特に「川」とか「丘」などの語源を持つものに多いそうです。内格の「~ssA」を使って「川の中に」とか「丘の中に」だと奇妙なので、所格(接格)の「~llA」を使って「川の上に」「丘の上に」としたい、ということなんでしょうかね。

教科書に出てくるフィンランドの代表的な地名を使って、通常のものと例外のものに分けて学びました。

●Helsinki(ヘルシンキ
「i」で終わる外来語由来の地名なので語幹はそのまま「Helsinki」、なおかつ nk → ng という変化が起こりますが、入格だけは変化がありません。
内格 Helsingissä ヘルシンキに/で
出格 Helsingistä ヘルシンキから
入格 Helsinkiin ヘルシンキ

●Porvoo(ポルヴォー)
入格は最後が二重母音の複数音節語なので「seen」がつくパターンです。
内格 Porvoossa ポルヴォーに/で
出格 Porvoosta ポルヴォーから
入格 Porvooseen ポルヴォーへ

●Espoo(エスポー)
入格は Porvoo と同じ。
内格 Espoossa エスポーに/で
出格 Espoosta エスポーから
入格 Espooseen エスポーへ

●Lahti(ラハティ)
「i」で終わるフィンランド語由来の単語なので語幹は「Lahte」、なおかつ内格と出格では t → d の変化が起こります。
内格 Lahdessa ラハティに/で
出格 Lahdesta ラハティから
入格 Lahteen ラハティへ

●Lappeenranta(ラッペーンランタ)
内格と出格では nt → nn の変化が起こります。
内格 Lappeenrannassa ラッペーンランタに/で
出格 Lappeenrannasta ラッペーンランタから
入格 Lappeenrantaan ラッペーンランタへ

●Savonlinna(サヴォンリンナ)
素直にそのまま。
内格 Savonlinnassa サヴォンリンナに/で
出格 Savonlinnasta サヴォンリンナから
入格 Savonlinnaan サヴォンリンナへ

●Kuopio(クオピオ)
単語の最後にある二重母音「io」は別々の音節として扱います。というわけで「pi」は最後の音節ではないので kpt の変化が起こらない点に注意。
内格 Kuopiossa クオピオに/で
出格 Kuopiosta クオピオから
入格 Kuopioon クオピオへ

●Joensuu(ヨエンスー
もともと「joki(川)」と「suu(口)」の合成語(川口ですね)で、「joki」が属格の「joen」になっている都市名だそうです。入格は最後が二重母音の単音節語なので「h」がついてなおかつ母音を伸ばし「n」がつくパターンです。
内格 Joensuussa ヨエンスーに/で
出格 Joensuusta ヨエンスーから
入格 Joensuuhun ヨエンスー

●Jyväskylä(ユヴァスキュラ)
素直にそのまま。
内格 Jyväskylässä ユヴァスキュラに/で
出格 Jyväskylästä ユヴァスキュラから
入格 Jyväskylään ユヴァスキュラへ

●Oulu(オウル)
素直にそのまま。
内格 Oulussa オウルに/で
出格 Oulusta オウルから
入格 Ouluun オウルへ

●Vaasa(ヴァーサ)
素直にそのまま。
内格 Vaasassa ヴァーサに/で
出格 Vaasasta ヴァーサから
入格 Vaasaan ヴァーサへ

●Pori(ポリ)
「i」で終わる外来語由来の地名なので語幹はそのまま「Pori」。
内格 Porissa ポリに/で
出格 Porista ポリから
入格 Poriin ポリへ

●Turku(トゥルク)
語幹は k → × の変化が起こって「Turu」ですが、入格だけは変化がありません。
内格 Turussa トゥルクに/で
出格 Turusta トゥルクから
入格 Turkuun トゥルクへ

ここからは例外です。例外の地名では、格語尾がこうなります。

内格 ~llA ~に/で
出格 ~ltA ~から
入格 ~lle ~へ

●Rovaniemi(ロヴァニエミ)
「rova」と「niemi」の合成語で、「niemi(岬)」は「i」で終わるフィンランド語由来の単語なので語幹は「Rovanieme」。
内格 Rovaniemellä ロヴァニエミに/で
出格 Rovaniemeltä ロヴァニエミから
入格 Rovaniemelle ロヴァニエミへ

●Seinäjoki(セイナヨキ)
「seinä」と「joki」の合成語で、「joki(川)」は「i」で終わるフィンランド語由来の単語で、かつ k → × の変化が起こって語幹は「Seinäjoe」。
内格 Seinäjoellä セイナヨキに/で
出格 Seinäjoeltä セイナヨキから
入格 Seinäjoelle セイナヨキへ

●Tampere(タンペレ
e → ee の変化が起こって語幹は「Tamperee」。
内格 Tampereella タンペレに/で
出格 Tampereelta タンペレから
入格 Tampereelle タンペレ

●Riihimäki(リーヒマキ)
「i」で終わるフィンランド語由来の単語なので語幹は「Riihimäke」。
内格 Riihimäellä リーヒマキに/で
出格 Riihimäeltä リーヒマキから
入格 Riihimäelle リーヒマキへ

●Ahvenanmaa(アフベナンマー)
スウェーデンに近い島です。
内格 Ahvenanmaalla アフベナンマーに/で
出格 Ahvenanmaalta アフベナンマーから
入格 Ahvenanmaalle アフベナンマーへ

主な地名の格変化を学びましたが、いや、これは大変です。もちろん外国の地名も同様に変化します。

Tokio(東京)
内格 Tokiossa 東京に/で
出格 Tokiosta 東京から
入格 Tokioon 東京へ

これでようやくこんなことが言えます。

(Minä) matkustan Helsingistä Turkuun.
(私は)ヘルシンキからトゥルクへ旅行します。

「Minä(私)」が括弧書きになっているのは、動詞の「matkustaa(旅行する)」が一人称単数形の「matkustan」になっているだけで「私は」の意味が出るので省略されることが多いからです。

しかもこの文章は「Helsingistä Turukuun matkustan」と言っても構わないとのこと。フィンランド語は語順で話す言語ではないからですが、これはまんま日本語の「ヘルシンキから、トゥルクへ、旅行します」の語順ですよね。しかも主語が省略されるところも日本語に似ています。名詞の格変化が「てにをは」の役割を果たし、語順まで同じ。ということはつまり、単語を覚え、格変化さえ自在に操れるようになれば、日本語と同じ感覚で話せるということではありませんか(実際はそんなに単純じゃないでしょうけど)! だったら同時通訳もやりやすそう(……なわけないですね)。

f:id:QianChong:20180321154406j:plain
Tokiosta Helsinkiin matkustan.