インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

分別のある年寄りになりたい

能楽堂の客席は、正方形の舞台を左側から正面に向けて取り囲むようにL字型に配されており、正面側の席が値段もお高くなっています。先日は少々奮発して真正面の席を取っておいたのですが、前の席にとても大柄な男性が座り、舞台がほとんど見えませんでした〜。残念。でもまあこれは仕方がないのです。身を乗り出すなどはマナー違反ですけど、体格はご本人にもどうしようもないですもんね。まっこと、能楽堂の正面席はギャンブルみたいなところがあります。やはり私は「分相応に」比較的お安い中正面や脇正面で観ようと改めて心に誓いました。

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http://kita-noh.com/stage/seat/

あと、正面のお高い席は比較的ご高齢の方が多いのですが、正直に申し上げてマナーの悪い「じじばば」の出没頻度が高いです。開演後いつまでも喋っている。途中で寝ちゃって(これは別にいいんですけど)鼾をかく。謡曲の、覚えている段に差し掛かるとうなるように謡い出す(気持ちは分かります)。「あめちゃん」の包み紙ガサガサ……など。

昨日は隣のおじいさまがやおら懐からデジカメを取り出すと、「ピッ」という音とともに電源を入れ、客席の上に大きくカメラを掲げ、なんとフラッシュをたいて写真を撮っていました。私が「ダメですよ」と諌めたら「私は特別に許可されている」だって。見え透いた嘘です。だってその能楽堂では撮影が許可された方はみなさん首から大きな許可証を下げているのですから。私が重ねて「それでもフラッシュはたいちゃダメですよ」と再度諌めたら「切るのを忘れてたんだ。悪かったな」とタメ口の上から目線。う〜ん、こういうおじいさまは度しがたいですねえ。
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https://www.irasutoya.com/2017/07/blog-post_116.html

それでも、伝統芸能に造詣の深い友人によると、能楽堂はまだまだマシなんだそうです。歌舞伎の客席なんかもっとマナーの悪い人たちが大勢いると。まあこうした芸能も、その始まりの頃はかなり熱狂的な、あるいはある意味猥雑な雰囲気の中で上演されていたみたいですから、むしろ現代のすました「伝統芸能」というスタイルの方が異質なのかもしれませんけど。

それでもやはり、会場前に何度も「撮影や録音は固く禁じられております」とのアナウンスが入っていたにも関わらず、こういう挙に出る方——それもいい歳をした方——が出没するというのは、何とも残念です。私たちは分別のある大人、いえ老人になるべく、努力を重ねなければなりませんね。