インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

フィンランド語 20 …「話す」をめぐって

「puhua(話す)」という動詞を学びました。まず人称による変化を確認しておきます。

● puhua(話す)
①最後の a を取って語幹は puhu 。
②語幹の最後の音節に「k,p,t」 がないのでそのまま変化。つまり……

puhun puhumme
puhut puhutte
puhuu puhuvat

Puhutko sinä suomea ?
あなたはフィンランド語を話しますか?
Puhun, mutta vähän.
話します。でも少しです。

suomiフィンランド語)」が分格の「suomea」になっています。先生によると「全て」と言えない目的語は分格をとるそうです。つまり「フィンランド語を話す」といっても、フィンランド語全てを話すわけではなく、ごく一部のある話題を話すからということかな?

日本語にはない概念の分格ですが、それでも同じ人間の思考である以上、全く理解できないということはないはず。分格は「分ける格」というその名の通り、目的語が一部分であることを表すんでしょうね。

話しますかと問われて、「Puhun」と答えています。人称代名詞の「Minä」が省略されていますが、「Puhun」自体が一人称単数の形なので、言わずもがななんですね。同時に「話す」という肯定の答えにもなっているわけで、要するにこれは「はい」にあたります。先生が「フィンランド語には Yes や No にあたる言葉がない」と言っていたのはこのことですね。

ちなみに「はい」の場合はそれぞれの人称によって変化した形が、「いいえ」の場合は否定辞のあとに動詞の語幹、つまりこの場合は「puhu」がつきます。したがって……

はい いいえ
(minä) puhun (ninä) en puhu
(sinä) puhut (sinä) et puhu
(hän) puhuu (hän) ei puhu
(me) puhumme (me) emme puhu
(te, Te) puhutte (te, Te) ette puhu
(he) puhuvat (he) eivät puhu

……ということですね。

Mitä kieltä sinä puhut ?
何の言語をあなたは話しますか?
Minä puhun japania ja englantia sekä vähän suomea.
私は日本語と英語、それから少しフィンランド語を話します。

「kieltä」は「kieli(言語)」の分格です。i で終わるフィンランド語の場合は、語幹が変化して「kiele」になりますが、これは「pieni(小さな)」と同じで「le、ne、re、se、te(レネレセテタイプ、と先生は言っていました)」ですね。

●「kieli(言語)」を分格にしてみる。
i で終わるフィンランド語の場合は、語幹が変化して「kiele」。最後が le、ne、re、se、te で終わるので、語尾は tA(単語に aou が含まれていれば ta 、含まれていなければ tä ) になり、さらに e が消えます。つまり、kiele + tä = kieletä ですが、e が消えて kieltä となるわけです。

「sekä」は事物を列挙するとき、最後につける「それに」にあたる言葉。英語でも「〜, 〜, 〜 and 〜」、中国語でも「〜, 〜, 〜 和 〜」といいますが、同じですね。

しかも、ほんの少ししか話せなくても、フィンランド語では「少ししか話せない」と否定的に言うことはまずないそうです。肯定で「少し話せる」と言う。これ、留学生などに接していると、英語や中国語が母語の生徒さんたちもみんな同じですね。ほとんど挨拶程度しか話せなくても「少し話せる」と言う。この点、日本人はかなり話せても謙遜して「少ししか話せない」と言います。興味深い差異です。

あ、ちなみに「kiina(中国語)」の分格は、これはもう外来語ですから単に「a」をつけて「kiinaa」ですね。

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Me puhumme kiinaa.

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He puhuvat suomea.