「人(所有者)+llA on ●」で「だれそれが●を持っている」を表す「所有文」を学びました。先回学んだ日本語にはない概念「分格」が関わっています。
所有文になるとまたまた人称代名詞が変化します。今回は「llA」がくっつく。これ、以前学んだ「〜の上に/で」の格語尾ですね。フィンランド人の「所有する」は上に乗っかっているイメージなのかしら。
minulla on …
sinulla on …
hänellä on …
meillä on …
teillä,Teillä on …
heillä on …
もちろん、指示代名詞以外に具体的な名前でも「-llä/-llä on …」で持っていることを表せると。そしてうれしい(?)ことに、どの場合もolla動詞は「on」ひとつだけ。否定の場合も「ei ole」だけ。これは覚えやすいです(人称代名詞は新たに覚えなければなりませんが)。
しかし喜んだのもつかの間、所有文は以下の6パターンに分かれるそうです。
① Minulla on kissa. 私は猫を飼っている。【肯定】…名詞が単数主格。
② Minulla ei ole kissaa. 私は猫を飼っていない。【否定】…名詞が単数分格。
③ Minulla on rahaa. 私はお金を持っている。【肯定】…名詞が単数分格。
④ Minulla ei ole rahaa. 私はお金を持っていない。【否定】…名詞が単数分格。
⑤ Minulla on kiire. 私は忙しさを持っている(忙しい)。【肯定】…名詞が単数主格。
⑥ Minulla ei ole kiire. 私は忙しさを持っていない(忙しくない)。【否定】…名詞が単数主格。
①②は可算名詞のとき、③④は不可算名詞のとき、そして⑤⑥は身体的な特徴を表すときだそうです。それぞれの肯定と否定で、名詞が主格になるか分格になるかが決まっているんですね。そも日本語では可算・不可算をほとんど意識しませんからこれは私達にはなかなか手強そうです。
しかし先回も学んだように「分格」は不可算であったり2以上の複数であったりするときに出てくるもの。これはつまりフィンランド語では文意に明確な「ひとつ」が含まれていない場合はすべて「分格」を取るのかな、と思いました。
①は可算名詞で肯定文ですから、持っていると言った時点で「ひとつ持っている(飼っている)」ということが確定するのでしょう。つまり英語や中国語のように「a」や「一個(個)」さえいらないわけです。この辺は日本語に通じるものがありますね。
②も可算名詞ですけど否定文です。否定しているということは、そもそも何匹飼っているかも不明ですし「ゼロ匹飼っている」と考えることもできます。いずれにせよ「ひとつ」以外の数なわけで、それで「分格」を取るのかな。
③④は「お金」で、コインや紙幣などは「可算」ですが、お金の量(価値)そのものは「不可算」です。だから肯定・否定とも「分格」を取る。うん、これは何となく分かります。
⑤⑥は「身体的な特徴を表すとき」だけなので「例外」と考えることにしましょう。肯定・否定とも単に主格を取るだけなので簡単ですし。先生からはとりあえずよく使う「kiire(忙しい)」「nälkä(空腹だ)」「jano(喉が渇く)」「kuuma(暑い)」「kylmä(寒い)」を覚えてくださいと指示がありました。
Minulla on kylmä. 私は寒いです。
冷房が効きすぎた部屋なんかで使えそうですね。ちなみに所有文ではなく普通に「私・は・寒い」のつもりで「Minä olen kylmä」と言うと、これは私自身が寒い・冷たい存在であるということになって「私は冷たい人間です」という意味になるので注意が必要とのことでした。
所有文を使って「私は本を持っている」の諸相を見てみます。
Minulla on kirja. 私は本を持っています。
「kirja(本)」が単数主格(元の形)なので、一冊の本を持っていることが確定します。
Minulla on kaksi kirjaa. 私は二冊の本を持っています。
「kaksi(二)」が入っているので複数になり、「kirja」は単数分格の「kirjaa」になっています。
Minulla on kirjat. 私は全ての本を持っています。
「kirja」が複数主格の「kirjat(本たち)」になっています。そこにある本全てという意味になります。
Minulla on kirjoja. 私はいくつかの本を持っています。
「kirja」が複数分格の「kirjoja」になっています。
これら四つの文のうち、一番上の一つを除いては全て複数の本について述べています。フィンランド語では複数を細かく三つに分けて言うのですね。しかも助詞や副詞なども伴わず、単語(ここでは名詞)そのものの中にその細かな意味を入れてしまう、と。非常にユニークな(自分の母語から考えればということで、フィンランド母語話者からすれば当たり前なんでしょうけど)言葉のありかたですね。……しかし、実際にこれを会話で話すとなると、かなりの修練が必要になりそうです。
ちょっと練習してみます。
Minulla on sininen polkupyörä.
私は青い自転車を(一台)持っています。
自転車は可算名詞ですから、上記の①にあたるごく普通の文です。もし二台持っている場合は……
Minulla on kaksi sinistä polkupyörää.
私は二台の青い自転車を持っています。
「sininen(青い)」が「sinistä」と、とんでもない変化をしています。これは先回「分格」の作り方を学んだ際に出てきた以下のケースです。
⑤辞書形(元の形)の単語の最後が子音で終わる単語は、最後が -nen 、-uus、-yys の場合とそれ以外で作り方が分かれます。
まず -nen は se になり、-uus と -yys は最後の s が te になり、そのあとに tA がつきますが、この時 e が消えます。例えば「punainen(赤い)」は punaista、「uusi(新しい)」は uutta になります。う〜ん、ややこしい。
一方でそれ以外の場合は語幹をまったく操作することなく語尾に tA をつけます。例えば「kaunis(美しい)」は kaunista になります。
「sininen」は「-nen」で終わっていますから、「-nen」が「se」になって「sinise」、なおかつ「tA」がついて「sinisetA」、aouがないので「A」は「ä」、なおかつ「e」が消えて最終的に「sinistä」になりました。ふー。
https://www.irasutoya.com/2015/01/blog-post_920.html
Minulla on kaksi punaista polkupyörää.