インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ぎっくり腰との四半世紀にわたる戦い

はじめて「ぎっくり腰」になったのは、会社員をしていた30歳の頃でした。期末の棚卸しか何かで大きなキャビネットの引き出しを移し替えていたときに「ぎっくり」と。最初は軽い違和感だけだったのが、みるみる痛みが広がって、半歩歩くのも困難なくらいに。

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https://www.irasutoya.com/

「ぎっくり腰」をやった方が異口同音におっしゃいますが、これって立っても座っても歩いても、さらには寝ていても痛いんですよね。会社の先輩に武術をやっていた人がいて、そのお知り合いにカイロプラクティックの治療院を開業している人がいるということで、タクシーで駆けつけました。

「カイロ」と聞くと、多くの方が「あのボキボキっとやるやつでしょ?」と思うみたいですが、私が行ったのは「応用運動機能学治療」を掲げている治療院で、ボキボキどころか、逆に「これでホントに治療しているの?」と思うくらいにソフトな施術でした。

専用のベッドに寝たり立ったりして(身体をあてる面が水平から垂直まで自由に動かせるようになっているのです)足や腕をゆっくり上げたり下げたり。あるいは合図に合わせて息を吸ったり吐いたり。その間に治療師の先生が、私の身体の様々な部位を軽く支えたり押したり引いたりします。その動作もごくごく軽い力で、ほとんど触っているか触っていないか……といった感じです。

どうやらちょっとした抑制なり助力なり刺激なりを与えつつ骨や筋肉を動かすことで、自然に身体の歪みをとっていく、それがひいては腰痛の解消につながっていく……ということらしい。というわけで、治療を受けたとたんに症状が劇的に軽快するというのは(少なくとも私の場合は)まれで、一週間ほどの間隔を開けながら何回か通うことになります。

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https://www.irasutoya.com/

また興味深いのが「Oリングテスト(オーリングテスト)」と呼ばれる診断法で、これは例えば、親指と小指で作った環を切れないように力を入れた状態で、治療師がその環を両手で引っ張るというものです。身体に不調があればこの環が簡単に切れるのですが、健康な状態だと切れません。

また腕を横に水平に上げた状態で治療師がその腕を下に押し下げるとか、椅子に座って片膝を少し上げた状態で治療師がその膝を下に押し下げるといったパターンもあります。いずれも身体に不調があれば、情けないほど簡単に押し下げられてしまいます。説明によれば、それは不調な部分を庇おうとするがゆえに力が入らないのだ、ということのようです。

とはいえ、カイロプラクティックや応用運動機能学治療については、ネットで検索してもいろいろな情報が飛び交っていてなんとなく雲をつかむような話です。上述の「Oリングテスト」についても、疑似科学としてかなり懐疑的な考察を加えているサイトもあります。

オーリングテスト | 疑似科学とされるものの科学性評定サイト

また「Oリングテスト」については、なかには「悪いものに触れていると必ず指が開く」的なほとんど占いかオマジナイの類の「すぴりちゅある」な解説をしているサイトもあって、これはちょっといただけません。

このように、カイロプラクティックには(まあ整体でも接骨でも何でもそうですが)「ボキボキ」という間違ったイメージが一部に流布されていることもあって、どうしてもそこはかとない不安がつきまといます。しかも私が駆け込んだ治療院は保険も効かなかったので、一回数千円の治療費も、回を重ねていくとけっこう厳しいものがありました。ただ、それでも通ううちにだんだん良くなっていって、最終的にはまったく腰痛を感じない状態にまでなりました。

それから約四半世紀、つごう三回ほど大きな「ぎっくり腰」を経験しました。ぎっくり腰は「一度やるとクセになる」などと言われ、それほどひどくはないものの、そこはかとない腰痛には度々見舞われるようになり、腰痛予防のためにスーパーの買物の袋は荷物を均等に分けて両手で持つとか、床にあるものを拾うときには必ず手を膝に当てて腰の負担を防ぐなどの「作法」が当たり前の、タダの中年おじさんになってしまいました。

上井草のゴットハンド

そうやって腰痛に見舞われるたびに、最初に駆け込んだカイロプラクティックの治療院に、のちには、そこの先生のそのまた先生がやっている治療院にお世話になってきました。

www.seibucpo.info

ここは東京近辺の「腰痛持ち」さんの間ではかなり有名な治療院らしく、予約がすぐに埋まってしまいます。それでも一度通院するとネットから予約できるので、今でも年に数回はお世話になっています。腰痛治療以外に、定期的に身体のメンテナンスを行うアスリートの方なども通っていると聞いたことがあります。

ここの先生、いや私は「上井草のゴッドハンド」とひそかに尊称していますが、なかなかインパクトが強いです。見た目は大地の党の鈴木宗男氏そっくり。でもって、いつもお弟子さんと思しきアシスタントさんがいて、その方と二人で治療してくれます。というか、半分アシスタントさんの練習でもあるのかな、とは思いますが。でもって、特筆すべきはその治療時間の短さ。たぶん始めから終わりまで五分もかかっていないと思います。これでけっこうお高い治療費は正直「ええ~?」と思うのですが、それでも確実に良くなるので通ってきました。腕は確かだから、予約も殺到するんですね。

ところが。

このトシになって、「ゴッドハンド」をしても容易に軽快しないたぐいの腰痛に悩まされるようになりました。どれだけ日常生活で気をつけていても、たびたび腰痛に襲われるのです。腰痛になった方はおわかりになると思いますが、腰痛って単に腰が痛いだけじゃないんですよね。なんというか、日常生活のすべてがどんよりして、活きる活力が失われていきます。仕事も趣味も家事も、やる気が下がることこの上ありません。QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)がだだ下がりになるのです。

これはかなり良くない兆候です。くわえてひどい肩凝りにも恒常的に悩まされるようになりました。ますますQOLが下がっていく……このまま行けば老化、それも心身ともの老化まで一直線です。というわけで、昨年の秋から、「男性版更年期障害」たる不定愁訴の解消も含めてトレーニングに通い始めました。主にインナーマッスル体幹)を鍛えて、腰痛や肩凝りや不定愁訴を改善していこうというわけです。「ゴッドハンド」先生からも「ある程度筋肉をつけた方が腰痛になりにくいですよ」と勧められていたことでもありますし。

qianchong.hatenablog.com
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能動的に動かなければ治らない

そして現在。すでに肩凝りは「全快」と言っていいほど解消しました。不定愁訴もまずまずの軽快。ただ腰痛だけはしつこく、くり返し襲ってきます。特に変な姿勢を取ってなくても襲ってくるときは襲ってくる。この間は教卓に座っていて「あっ、あの資料を忘れた」と立ち上がった瞬間に「ぎっくり」来ました。あれだけ不用意に動くのを注意していたというのに……ばかばか。

ただこれも、そうした動きについていけないくらい体幹なり筋肉なりが備わっていない、もっとざっくり言えば、おのれの身体の正しい使い方をまだ習得できていないということなのでしょう。アスリートが身体の「故障」を一番恐れるがゆえに体幹を鍛えるのと同根の理屈です。

整体やマッサージやカイロプラクティックなどの治療院は、その時は気持ちよくて直ったような気もしますし、実際軽快もするのですが、根本的には治癒していないのですね。ここにきて「自ら能動的に動かなければ根本的には直らない」ということが分かってきました。実際トレーニングに行くと、その間は腰痛をほとんど感じないのです。むしろ安静にして座っている時、何時間も座ってパソコンに向かっているときなどが一番危なく、痛くなる。能動的に動いてこそ腰痛も克服できるのだと思います。

私はアスリートじゃありませんが、引き続きQOLを下げないよう、実年齢以上に老け込んでしまわないよう、「能動的に動いて治す」ことに精進します。ちなみに蛇足ながら、腰痛に関して一番効果の薄い治療法は、テレビなどで盛んに大宣伝されている腰痛用の塗り薬や湿布薬をつかうことだと思います。

追記

たまたまですけど、この記事を書いた日の夜に、NHKの『ガッテン!』で腰痛を含む「慢性痛」の話題が取り上げられており、「小さな達成感を脳に感じさせることで、痛みを感じにくくなる」という説が紹介されていました。え〜ホント? と思わず眉に唾をつけたくなりますが、よく考えてみれば、トレーニングをしているときに腰痛をほとんど感じない、というのと同じですね。ベンチプレスなどのハードなメニューをこなしているときは、確かに痛みを完全に忘れています。

www9.nhk.or.jp