インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

すてきな「公私混同」

先日、人名や地名、外来語など、華人留学生が苦手な単語を中心としたクイックレスポンス練習用にQuizletを導入してみました。

qianchong.hatenablog.com
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このQuizlet、サイトの利用もスマホアプリも無料です。ただ、教師が教材を作る際、自分で音声を吹き込みたい場合には、有料プランに申し込まなければなりません*1。年34ドル99セント。ひと月あたり約320円といったところですか。

仕事で用いるツールへの出費なので、本来なら学校へ料金を請求すべきところです。が、年度の予算にないものを購入するとなると、うちの学校の場合はいろいろと面倒です*2。提案、稟議、根回し、決裁、領収書、申請書、会計システムへの入力、印刷、捺印、担当部署への提出……等々。

まだ自分でも手探りで授業をしていて、いわば「自転車操業」の中、とてもじゃないけどそんなことをしている時間がありません。なおかつQuizletは自分の語学学習用にも活用しているので、100%仕事用というわけでもないのです。かといって、個人用と仕事用にふたつアカウントを持つのも面倒です。

本来ならその面倒を厭わず、公私をきっちり分けるのがきちんとした大人のあり方なんでしょうけど、今はQuizletを試験的に使ってみて良ければ継続、不具合があればやめるという段階。そんな段階ではなおさら予算申請が面倒なので、私はもう「公私混同」しちゃうことにしました。「私」を「公」に引き寄せるんじゃなくて「公」を「私」に引き寄せる公私混同です。同僚からは「え〜、自腹を切るなんてダメだよ、学校に出させなよ」と言われていますが。

かつて某学校で、教案作りに力を入れすぎて残業が続き、息も絶え絶えになっていた頃、ある方から「ありものの教材やツールの範囲でも、それなりに授業を組み立てるのが本当のプロですよ」と忠告されたことがあります。本当にその通りだと思います。そして、自分からの持ち出しが多くなればなるほど独り善がりにもなり、はては健康まで害することも分かったので、その後は忠告に従ってなるべく自制するようにはしているのですが、それでも私は、今でも完全に「公」と「私」を分けることができていません。

例えば通訳訓練などで用いるパソコンとその周辺ツール。いくつかの学校で支給されているパソコンはいずれも旧式のWindows機で、起動は遅いわ、メモリは少ないわ、機械式ハードディスクで音声や映像がもたつくわ……などなどで、とてもじゃないけど訓練に使えません。最初のうちは学校側に意を尽くして説明して改善をお願いしていたのですが、なかなかスムーズには行かず、結局自分のSSD搭載のMacBookや各種のアダプタ類を持ち込んで、授業をすることがもう何年も続いています。

これも本来なら「ありもの」で何とかして見せるのがプロの腕の見せどころなんでしょうけど、私はもう、組織とのやり取りに心を煩わせる時間と心身がもったいなくて……。組織人としては失格だと思いますけど、どうかご勘弁いただきたいと思います。

そんなことを考えていたら、先日Facebookで、かつてワインスクールでお世話になった恩師がこんな書き込みをされていました。

先生の授業は、ホワイトボードに分かりやすく要点を書かれるのが特徴だったのですが、なるほど、あの淀みなく魅力的な授業の裏では、そこまで気を使っていらしたんですね。さすがです。

私も日常的にホワイトボードを使って授業をしていますが、確かに備え付けのマーカーのインクが薄くて何本もとっかえひっかえしたり、イレイザーが汚くて閉口したり、ということがよくあります。そんなことで授業が中断するのは自分が慌ててしまうし、なにより生徒さんにも申し訳ないですよね。

多少の「持ち出し」になって自腹を傷めてもいいじゃないですか。自分も、気持ちよく仕事をするために自分なりの「公私混同」を続けよう、と意を強くしたところでありました。

*1:機械の音声がかなり上手に発音してくれるのですが、英語や中国語はまだしも、日本語の場合ポピュラーな単語以外は変な読み方になっちゃうので、自分で発音を吹き込むしかありません。

*2:専門学校なので、ある程度個人の裁量で使える科研費のようなものもありません。しくしく。