インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

しまじまの旅 たびたびの旅 33 ……飛び込みでバレエを観に行く

コペンハーゲンの銀座歩行者天国」的なお買い物ストリート「ストロイエ」を歩いていたら、その終点に王立劇場の建物がありました。観光シーズンではないこの時期を狙ってか、市内はあちこちで改修中で、劇場前の広場も大規模に掘り返されていましたが、それでもこの偉容です。

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こんなところでオペラかバレエでも観てみたいなと「ダメもと」でウェブサイトを当たってみたら、何とオンラインでチケットを販売していました。当日の公演はさすがに売り切れだろうと思っていたら、二階席(バルコンと呼ばれる、一階席をぐるりと取り囲む席の上なので、実際には三階席)のいちばん後ろの列がたったひとつだけ売れ残っていたのでその場ですぐに購入です。

kglteater.dk

演目はバレエ。新しくできたオペラハウスの方にはミュージカルみたいなお芝居のチケットもあったのですが、デンマーク語は全く分からないので、バレエならまだ楽しめるかなと思って。演目は“Hübberiet”といって、シリーズもののようです。英語の解説を読んでも正直よく分からなかったのですが、まあいちおうジャケット着用で行ってきました。寒いのでその上からダウンジャケットをさらに羽織って。

チケットはネット決済後すぐにメールで届き、「プリントアウトの上、ご持参ください」と書いてあったので、近くの「キンコーズ」みたいなコピーショップをネットで探して、印刷しました。バーコードがあるので紙ではなくスマホ画面でもいいかなと思ったのですが、伝統の国立劇場だから……とちょっと身構えてしまいました。結局客席に入るところでバーコードリーダーで「ピッ」とやるだけの「もぎり」だったので、たぶんスマホ画面でも大丈夫だったのでしょうね。

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開演間のロビーでは、あちこちで飲み物など楽しむ紳士淑女のみなさまが。年齢層はかなり高めですが、意外にドレスアップしているというわけでもなさそう。ここに限らず、北欧の各国ではかなりフォーマルなレストランでもダウンジャケット姿という方が多かったです。なんといってもこの季節は寒すぎるから、ドレスコードも実利本位なんでしょうね。

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私もお上品にシャンパンなどグラスで。店員さんが「インターミッション(幕間かな?)があるけど、その時にも一杯どうですか」と勧めてくるので、上手く乗せられて注文しました。番号が打たれたレシートを渡され、幕間にロビーに出てくると、テーブルに番号とともに飲み物が置いてあって各自取る……という、合理的だけどあまり優雅ではないような気もするシステムでした。

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客席はこんな感じで、おお、この雰囲気は映画『ゴッドファーザーPart3』で観たような。お隣に座っていた老夫婦と「天井が低いですね〜」と笑い合いました。そう、この客席を取り囲むように配されている各階の席は柱や天井などで一部の視界が遮られるので、ネットでチケットを買うときも「ご注意! 舞台の一部が見えないことがあります」とアラートが入るのでした。

上演中は撮影禁止なので写真はありませんが、“Hübberiet”はバレエではあるけれど、演目と演目の間に、振り付け師と思しきおじさんがホスト役でバレエ関係者を登壇させ、その場で討論や解説をしたり、昔の映像を見たり、現役のバレエダンサーに即興で振り付けをしたり……という、とても斬新なバレエ・エンタテインメント的パフォーマンスでした。デンマーク語がまったく分からない上に、私はバレエも門外漢ですけど、それでもさすがに美しい……と思いました。

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幕間に、隣にいらした老夫婦から「デンマーク語、わかる? あなた、コペンハーゲンで何の仕事してるの?」と声をかけられました。旅行者で、今日たまたまチケットが手に入ったんですといったら「それは幸運でしたね。なかなか買えないから」。日本から来たといったら「何十年か前に知り合いをたずねて京都に行きました。その知り合いとは今でもメールのやり取りをしていて、お子さんは大阪フィルの団員で……楽器? さて、なんだったかな。オーボエかフルートか、そんなところ」などと話が盛り上がりました。

長い歴史の伝統が醸し出す重厚さと、現代のネットの便利さを十二分に体感できた一夜でした。