インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

君たちはどう生きるか

久しぶりに吉野源三郎氏の『君たちはどう生きるか』を読み返しました。手元にある岩波文庫版の奥付を見ると「1982年11月16日 第1刷発行」となっています。今の白い表紙に肌色の背*1がついたカバーではなく、パラフィン紙がかかった古い仕様です。

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

初めて読んだ時によほど感動したと見えて、読了日が鉛筆で書き込んでありました。「1982年11月18日」。当時なぜこの本を読もうと思ったのかは記憶がありませんが、とにかく発売後すぐに手に入れて読んだわけですね。ただ、夜に読み始めたら止まらなくなり、深夜まで読み続けて読了し、その後も興奮で眠れずほとんど徹夜で朝を迎えたことを今でもよく覚えています。

それほど感動的な本でした。個人と社会の関係をこれほど平明に説いた本を他に知りません。それ以来この本は、生き方の指針のひとつとして今に到っています。岩波文庫版は1982年の発行ですが、実はこの本、最初の版が出たのは1937年、盧溝橋事件で泥沼の日中戦争に突き進み、ファシズムが日本全体を覆わんとしていた頃でした。吉野源三郎氏自身のあとがきと、岩波文庫版に寄せられている丸山眞男氏の解説によれば、この本はそんな時勢に向き合う気持ちと、次の世代を担うべき大切な子供たちに希望を託したいという切実な願いから執筆されたそうです。

一番思い出深いのは「豆腐屋の浦川君」のエピソードかなあ。主人公のコペル君は、銀行の重役だった父親が早くに亡くなったとはいうものの裕福な家庭の出身で、かたやクラスメートの浦川君は時に家業の豆腐屋を手伝わなければならないために勉強が遅れがちな「貧しき友」。そんな二人が心を通わせていく経緯と、とくにコペル君が浦川君を通して貧困とは、労働とは、そしてまだ若い自分が今後社会に何をなしていくべきかを考え始める……という物語は、時代の異なる現代の私たちもじゅうぶん学ぶに足る内容だと思うのです。

ぜひぜひ、若い方々には特に、おすすめ。

*1:この肌色はかつての岩波文庫の「デフォルト」だった表紙の色を引き継いだものですね。