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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

どんぶり勘定人間への福音

仕事の帰りに日暮里のエキュートにある本屋さんに立ち寄ったら、『正しい家計管理』という本が目に留まりました。帯には「どんぶり勘定は低収入より恐ろしい」とあります。何という秀逸な惹句。「割れ鍋に綴じ蓋」ならぬ「どんぶりにどんぶり」な私たち夫婦にとっては必見の書と、即買い求めました。


正しい家計管理

読み始めてから気がつきましたが、林氏はベストセラーになった『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』の著者だったんですね。同書は立ち読み+マンガ版でぱらぱらと読みましたが、氏のご本をじっくり読んだのは初めてでした。

一読、素晴らしい本でした。この本に従って簡単な財産目録と収支実績表と特別支出予測表を作るだけでも、家計の現状が一目瞭然。私のようなどんぶり勘定人間には特に効きます。ボンヤリと意識していた収支がクリアになり、仕事への活力がわきます。同時に、様々な無駄な支出もクリアに浮かび上がってきます。

林氏の主張で素晴らしいのは、家計管理は「家計簿」をつけて「節約」することがその本義ではないと喝破しているところ。それは後づけの言わば後退戦だと。そうではなくて、企業のような倒産が絶対に許されない家庭の家計にこそ、実は会社経営のような考え方が必要だと。どんぶり勘定人間はそこから逃げてたんですね。

世の中カネじゃないよ、俺はカネに振り回されないぜと吹聴し、宵越しの金は持たねえと威勢のいい啖呵を切りつつ、その実いつも漠然としたお金の不安がつきまとっている「月光族」な方々には福音になるかもしれない本だと思います。あ、「月光族」は中国語ですが、もう古い言葉になっちゃったかもしれません。
参考:http://matome.naver.jp/odai/2139915898315939301

どんぶり勘定人間って、「んな、財産目録とか収支実績とか、大袈裟な。だいたい俺、財産なんてほとんどないから書き出すまでもないし」と思ってるんですよね。私がまさにそれでした。でも騙されたつもりで虚心坦懐に一つ一つ表を埋めてみた効果は抜群でした。分かったつもりと可視化することの差はあまりにも大きいということです。

お金って、特に今の時代はキャッシュレス化が進んでいて、可視化がしにくいんですよね。家計の現状を把握し見直すことは、言わば家計の「断捨離」なんですけど、モノの断捨離と違って目に見えにくいうえに流動性があるので、ずぼらな人間はすぐ投げ出しちゃう。でもこの本で考え方が変わりました。

ハッキリ言って地味な本ですから、「キャリアポルノ」みたいな高揚感は期待しない方がいいでしょう。また、実際の作業はけっこうしんどいので、途中で投げ出したくなることもあると思います。それでも格差が広がり、低成長、あるいは衰退期(いやいや、高度に成熟した安定期とポジティブに表現しておきましょう)に入ったこの国において、今とこれから自分が稼ぎ使える「お金」について冷静な意識を持つことは、ますます必須の教養とでも言うべきものになっていくのではないでしょうか。そんなことを気づかせてくれたこの本と林氏に感謝したいと思います。