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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

副作用で消えたアトピー

ベル麻痺の発症から二週間、仕事は再開できたものの、予後の経過は……あまりよく分かりません。一日の間にも麻痺が進んだり緩んだりするような感じで、鈍い痛みを感じることもあれば,ほとんど麻痺のことを忘れるくらい爽快なこともあります。

話すことには基本的に大きな障害はありません。それでも唇の半分が動かないわけで、少なからず発音に影響が出ています。特に唇を使って口を突き出す形の発音、バ行やパ行などが出しにくいです。中国語も母音のuやウムラウトが辛いところ。気をつけて話せばほとんど分からないレベルだとは思いますが……それでも少々ヘコみますねえ。

お医者さんから「東洋医学」の鍼治療もいいよと勧められたので、試してみることにしました。でも、色々と調べた範囲では、ベル麻痺というのは放っておいてもそこそこは治る、というか、ダメになってしまった神経が少しずつ再生して元に戻るまでには長い時間が必要で、それまでは何をやってもさしたる劇的な効果は望めないようですね。焦らず(これが大事みたい。畢竟、ウイルスの再活性化という引き金を引いたのは他ならぬストレスだったようですから)気長に待つしかないみたいです。

それから、お能の兄弟子氏に教えていただいた、気功の治療院にも行ってきました。中国人の師傅から中国語であれこれ解説していただいて、ずいぶんリラックスしました。最後に「枕の下に置きなさい」と護符まで書いてもらいました。わ〜これ、なんだか台湾を思い出します。とても懐かしい気持ちになりました。

一方、「西洋医学」のお医者さんからは神経の炎症を抑える「副腎皮質ホルモン剤」である「プレドニン」を処方されています。ベル麻痺の初期の治療では定番の薬剤だそうですが、これっていわゆる「ステロイド」なんですね。ステロイドと言えば、アトピー性皮膚炎の外用薬としても有名ですが、このプレドニンは内服薬です。しかもかなり強い副作用があるらしい。

副作用、確かにありました。しかも劇的に。なにせ30年来悩まされてきた全身のアトピー性皮膚炎が、すべて消えてしまったのですから。私は10代の頃から首や背中や腕などにアトピー性皮膚炎があって、当時の診断では「穀物アレルギー」とのことでした。穀物ですから米や小麦に始まって、豆類のほとんどがアレルゲンだと言われました。主食のご飯やパンはもちろん、醤油も味噌も、豆腐もコーヒーもモヤシも……かなりの範囲の食材が食べられないことになります。

幸いなことに私のアトピーは比較的軽症で、ときおり皮膚が紅くなることはありますが、基本的に痒みがあるだけで顔などの目立つ部分はほとんど分からないくらいのレベルです。だもんで、一時は厳格な食事療法をしていてほとんど人生投げ出したくなっていた私に、お医者さんが「このまま一生食事療法を続けますか。それとも多少の痒みは我慢しながら好きなものを食べて生きていきますか」とアドバイスしてくれました。もちろん私は後者を選びました。

爾来30数年、年がら年中そこはかとない痒みと上手く折り合いをつけながら生活してきたのです。痒みがひどくなると無意識に掻いてしまうため、皮膚が掻き壊されて肌が荒れる結果になります。それでもまあ「ちょっと見」にはあまり目立たない程度、ときおり紅くなった皮膚を見て「なぜ冬なのに日焼けしてるの」などと勘違いされるくらい。まあ体質だから,死ぬまでこの痒みと荒れた皮膚とは縁が切れないだろうなと諦観していたのです。

それがも〜つるっつる。つるっつる。ハッキリ言ってニキビ面のティーンエイジャーよりよほどきれいな肌。頬の部分なんか、外光を反射して輝いてますから。間もなく「天命を知る」ような年齢とはとても思えません。正直、気持ちが悪いと言ってもいいほどのレベルです。私は外用薬・内服薬含めてステロイド剤を使ったことはほとんどありませんから、よけい劇的に効いたのかもしれませんが……恐るべき薬効です。

リバウンドが怖いです。この「ヤク」が切れたあとの禁断症状が怖い。プレドニンは短期集中的にどんと使って、徐々に服用量を減らしていくように処方されるそうです。今その最終段階に入っていますが、服用しなくなって一気にアトピーが復活したらいやだなあ。願わくばこれで身体が勘違いしてアトピーを卒業してくれたらいいんだけどな。

ま、ポジティブな考えを繰り返し脳にささやきかければ自己暗示的に脳が自分を変えていくそうですから、リバウンドが怖い、ではなくて、アトピーが消えてうれしい、そしてこれは絶対に今後も続くのだと思うことにします。