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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

フォアグラ弁当は残酷か

コンビニのファミリーマートで発売予定だった「フォアグラ弁当」が、消費者からのクレームを受けて発売中止になったというニュースを読みました。

ファミリーマートは24日、28日に予定していた「ファミマプレミアム黒毛和牛入り ハンバーグ弁当~フォアグラパテ添え」の発売を取りやめると発表した。フォアグラについて消費者から「残酷な食べ物だ」と指摘があったという。


フォアグラは、ガチョウやカモなどに大量の餌を食べさせ脂肪肝の状態にした肝臓で、フランス料理などに使われる食材。


ファミマは「一般的に受け入れられている食材と認識して発売を決めていた。不快に思われた方には申し訳ない」(広報担当者)としている。

http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014012401001950.html

金髪に高い鼻が人種差別だとクレームのあったANAのCMや、カエルのキャラクターが未成年の飲酒を誘発するとクレームのあったキリンのチューハイなど、このところ似たようなニュースが続きましたが、実は私、最初はいずれもいわゆる「釣り」じゃないかと思って何度も確かめちゃいました。

で、ANAやチューハイはさておき、フォアグラについてはそれまでも流通してたのに、コンビニで販売するようになったらクレームが顕在化したというのが興味深いですね。「消費者」の「指摘」の動機は何だろうと考えて、「欧米で健康志向が高まり、フォアグラの消費量が減ったぶん日本に安価で流れ、コンビニ弁当にまで登場、そうやって大量消費を温存するから鳥たちの受難は続くのだ」っちゅ〜抗議の理屈を拵えてTwitterに流してみました。

数日経って分かったのですが、健康志向の部分はハズレみたいだったものの、その他はだいたい想像通りだったようです。欧米で倫理的(?)な観点からボイコットが起こっていて、コンビニでの大量消費はその流れに逆行するものだという主張をされている「消費者」の一団があるんですね。

http://www.hopeforanimals.org/topics_detail6/id=274

まあ私はフォアグラなどほとんど食べたことがないし、これからも食べなくても特に残念でもないんですけど、コンビニがフォアグラの流通先になれば、「残酷な」生産が温存ないしは拡大されるという理屈、特にその「残酷だ」という理屈を敷衍していけば論理が破綻するんじゃないかと思いました。

これはもう昔から、例えば呉智英氏などが太田竜氏あたりを批判して繰り返し取り上げられてきた議論ですけど、じゃあ狭いところで肥育させられる魚の養殖は、労働の成果を横取りされる蜜蜂は、高温で大量死させられるイースト菌は…と際限なくなるんじゃない?

というか、敷衍する気はないのかな。それはそれ、これはこれ。是々非々。上記の「団体」は肉食の弊害を訴えていて、その主張はとても論理的で隙がないように見えます。でもこう言っては失礼ですが、比較的豊かな都会でしか生きてこなかった方はそういう硬直化した思考法に陥るのかもしれないと思います。自給自足に近い暮らしを一度なさってみるといい。人間がどれだけ他の生き物に活かされているかが分かります。

肉を食べないのは自由です。私だって肉の大量消費はいいことだとは思いません。が、それをイデオロギーにしない方がいいんじゃないかと。野菜だって作ってみれば分かりますが、F1の種苗(ぐぐってね)から間引きから植物の一生を無視した収穫時期から、とことん人間の都合、優生思想なんです。きっとそれにも我慢できなくなるよ。

そしてそういう人間の都合で、肉にしろ野菜にしろ穀物にしろ、食べ物を生産する仕組みを営々と積み上げてきたからこそ、食べ物にとどまらず人間の必要な物資を他の生命を犠牲にすることで生み出してきたからこそ、今これだけの人間が(自分も含めて)この世の中に生きていられるんじゃないかな。その営為をあまり軽く見るべきではないと思います。贖罪したい、気持ち的にスッキリしたいのは分かるんですけどね。

大量生産・大量消費を見直そうという考えには共感しますが、コンビニのフォアグラ弁当を「残酷だ」という理由でボイコットするというのには、どこか釈然としないものを感じたのでした。