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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ゼロ・グラビティ

映画

IMAX3D版で『ゼロ・グラビティ』を観てきました。
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/#/home

いや、前評判通り、凄かった。で、怖くて、寒気のする映画でした。真夏のロードショーだったら最高の納涼映画になったと思いますが、真冬のこの季節に観るのは少々身体にこたえます。

ネタバレを避けて、予告編で公開されている範囲でストーリーを描写すると、スペースシャトルで船外活動中の宇宙飛行士を突然スペースデブリの大群が襲って宇宙に放り出される……というものなんですけど、登場人物はたった二人、というかほとんどの場面が一人。驚異の映像と相まって、この上なく異色の映画体験になりました。

私は宇宙に関する話題が大好きで、宇宙船や宇宙開発、宇宙論や宇宙物理学などの入門書をよく読むんですが、この圧倒的な映像を目にして、なるほど宇宙の無重力空間ではこういうことが起きるんですね、物体はこういう振る舞いをするんですね、というのが改めて新鮮でした。

宇宙船の操縦や、様々な装置の使い方なども、まあたぶんデフォルメなり省略なりはされているんでしょうけど、すごくリアリティがあって。そして、重力もなく音もなく通信も途絶えた宇宙空間に一人でいることの絶望的な孤独感。その観る者全員が絶望しきったところからの、映画ならではの意外な展開。見終わってみればシンプルなストーリーですけど、何度も反芻できる奥深いテーマをいくつも内包しています。

その意味ではネットでも多くの人が語っているように、原題の『グラビティ(重力)』に「ゼロ」をつけて『ゼロ・グラビティ(無重力)』という邦題にしたのは、もったいなかったですね。全編ほとんどの場面が無重力だからこそ、重力の存在が強く意識されるわけで。絶望的な状態にいても、眼下には美しい地球が光っていて、人の営みを示す明かりも見える。そのすぐ手が届きそうな場所と自分のいる場所との強烈なコントラストというか、これ以上ないほどの相対性を象徴しているのが「存在しない重力の存在感」だと思ったのです。

宇宙に関する話は大好きな私ですが、自分自身が宇宙に行くのはまっぴらごめんです。「人間は、土を離れては生きていけない」と思うからです。この映画も、全編宇宙を描きながら鑑賞後に強く意識させられるのは、土の上に生きる人間という存在。ここでも極端すぎるほどの相対性が際立っています。

それから個人的にポイントだったのは、映画に中国が絡んでいる点です。中国といえば2007年に弾道ミサイルで人工衛星を破壊し、その結果スペースデブリを増やしたことで批難されましたが、この映画ではそれを踏まえ、しかもそれとは違う形で中国が絡んでいます。このあたり、時事性も兼ね備えていて興味深かった。ぜひ劇場の3D版で。私は字幕版を観ましたが、うわさによると吹き替え版のほうがより無重力感が増すらしい(字幕が画面下に出ると、上下の感覚が補強されるものね)ので、もう一度見に行こうかなと思っているところです。★★★★★。