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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

きのう何食べた?

よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』の最新第八巻が届きました。

はじめて「限定版」というのが出ていたので、こちらを買ってみました。限定版は特製「ビニールカバーXmasバージョン」と第一巻から第八巻までの各巻収録メニューがまとめられた「きょうの献立シール」つきです。

いや、編集さんはよく分かってるなあという感じ。というのもこのマンガ、台所に持ち込んで読むことが多いからです。要するに料理マンガなんですね。しかも「あのメニューは第何巻だっけ」ととっかえひっかえしながら探すことも多く、このシールが索引がわりになるというわけ。

基本的に各話読み切りのこのマンガ、弁護士の筧史朗(シロさん)と美容師の矢吹賢二(ケンジ)が一緒に暮らしてて(あ、このお二人はゲイカップルなんですね)、で、「兼業主夫」を自認するシロさんが、日々家庭料理を作るその過程が作品の大部分を占めているという、特異な作品です。

だけど、単にレシピを紹介するマンガというわけではなくて、料理がその回のストーリーと密接に関わっているのが特徴。でもって、各話読み切りながら全体を貫くストーリーがちゃんとあって、このあたり、『大奥』などでも大いに発揮されているストーリーテラーとしてのよしながふみ氏の凄みが存分に堪能できます。

この二人は共に四十代で、親の世代が老境に入って様々な変化が起こりつつあり、それに時に悩みながらも生活を楽しんでいるというのが、個人的にはとても親しみを感じるところでもあります。もちろんそれだけじゃなくて、二人を取り巻く人たちのキャラクターがとても立っており、結婚や離婚、DVやハラスメント、LGBTへの偏見、家事と仕事の両立など、非常に身近で今日的な話題について、声高ではなくとてもさりげなく語られているところが共感を呼ぶんですよね。

弁護士と美容師が主人公なので、業界の裏話的話題もいろいろ出てきます。これがまた面白い。よしながふみ氏は両業界を詳しく取材していますね。とあるきっかけで知り合いになった弁護士さんや、いつも髪を切りにいっているお店の美容師さんに一読を勧めました。ただお二人ともたぶんストレートの男性で、料理はたぶんそれほどはやらない方みたいで、この作品のあふれる魅力より前に「なんで私にオススメ?」と思われてしまったかもしれませんが。

よしながふみ氏のレシピはどれもシンプルな家庭料理で、私は三日と開けずお世話になっています。いま改めて、実際に作ってその後ヘビロテになった定番料理を確かめてみると……

ツナとトマトのぶっかけそうめん(夏によく作る)
いわしの梅煮(お酢の効果か骨まで柔らかくなります)
鶏肉のオーブン焼き(焼き肉のタレを使った手抜きだけどうまい)
ぶり大根(下処理のコツが秀逸)
セロリと牛肉のオイスターソース炒め(めったに牛肉買わないけど)
アスパラ入りジャーマンポテト(あっさり中年向き)
煮込みハンバーグきのこソース(ソースが単純なのに複雑な味わい)
鮭と卵ときゅうりのお寿司(来客にも好評)
かぶの海老しいたけあんかけ(簡単かつ上品)
手羽先と大根の煮込み(お義父さんに大好評だった)
長ねぎのコンソメ煮(副菜にすごく重宝します)
さばの味噌煮(かなり手抜きなのに美味しい)

……あたりですか。

マンガの進行と同時に主にシロさんの一人語りで作り方が語られるので、いつも台所にマンガを持ち込んで作っています。だから今回の限定版にビニールカバーがついてきたのはうれしいですね。とはいえ、上記のレシピはもうほとんど覚えちゃってますけど。欲を言えば、本の背が180度開くような装幀にしてもらえたら素敵なんですが、これはまあモーニングKCの一冊なんで、難しいかな。最近は『きのう何食べた?』のファンのみなさんが再現レシピをブログなんかで公開されているので、iPadで見ながら作ったりしてます。iPadがもっともっと軽くなって、冷蔵庫なんかにマグネットで貼り付けたりできたらいいんですけどね。

レシピは、こまかく「しょうゆ大さじ1」とか「酢80cc」などと書かれているのもあれば、「日本酒どぼどぼ」などとかなり大雑把なのもあります。これもいいんだよね。日常の家庭料理って、そういうもん。その日の体調とか、冷蔵庫のありものでいろいろ調整するし、レシピも完全にマンガの通り作ることはむしろ少なくて、上記のヘビロテ料理は今ではかなり自分のアレンジが入っちゃったものがあります。

第八巻には冒頭でカキフライが出てきたので、今晩はカキフライに決定。……あ、ただこのレシピは『きのう何食べた?』じゃなくて、『dancyu』2013年3月号に載っていた「カキフライ完全攻略」のレシピです。ごめんね。このレシピはもう何度も試しているけど最強、鉄板。以前帰省するたびに作っていた手羽先と大根の煮込みと並んで、お義父さんから「また作って」と催促されるもののひとつです。でもって、『きのう何食べた?』第八巻に出てくるカキフライも、どうやらこの『dancyu』をリスペクトしたとおぼしきレシピ。特に、小さいカキは二つ合わせるというとこらへんが。

よしながふみ氏のマンガはほとんど読んでいますが、『大奥』とこの『きのう何食べた?』は新刊の発売が待ち遠しい現在進行中のマンガ。オススメです。

さて、じゃあ、まずはカキを塩洗いしますかね。