インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

義父と暮らせば2

こないだ、高齢者との同居には様々な「掟」があると書きました。

お義父さんは会社を定年退職してからもう二十年以上もこの暮らしを続けてきているわけで、その「掟」を変えるとなると、かなりのストレスを感じるようです。それでも絶対に一ミリも変えないかというと、そうでもない。

先日の盆栽の一件でも分かるように、理を尽くして焦らずゆっくりとやれば、変化にも柔軟です。昨日など「あの盆栽の台はいいね。俺のもああいうふうにしようかな」と言っていましたし。だもんで、「じゃあもう一枚残っている銘木の板をあげますよ、木場で買ってきたやつ」と提案しました。一週間前は「シロアリがたかるから捨てなさい」と言われていた板ですけどね。

あと、お義父さんと一緒に暮らして、暮らしの様々なシーンに立ち会ってみるに、「これ、ひょっとしてだまされてるんじゃない?」という場面が目につくようになりました。

お年寄りが詐欺被害に遭ったというニュース、よく耳にしますが、まあ詐欺ではないにしても、お金を持っている高齢者にはいろいろな業者が狙いを定めているようで。

昨日は「長年使ってきた髭剃り機がこわれた」というので、近くの家電店へ行って新しいのを買ってきたんですけど、「もうひとつ買いたいものがある」と言うんですね。何かと思ったら、手にした新聞紙の全面広告を店員に見せて、「これ、売ってないかな」。

見せてもらうと、聞いたことのないメーカーの遠赤外線ヒーターなんですけど、なぜこんなのがこの値段? と思えるほど高価なんですよね。もっと信頼できそうなメーカーの最新製品が同じくらいかそれより安い価格で目の前に売られてるんですけど、全面広告の「省エネ」とか「部屋中ぽかぽか」などの惹句に魅了されて、「これがいい」と。

結局その家電店には売っていなかったのでそのまま帰宅したんですけど、気になってネットで調べてみると、口コミやレビューは賛否が拮抗していて、全体としてかなり怪しい印象でした。う〜ん、やっぱりこれはやめた方がいいんじゃないかと思ってお義父さんに告げるも、もう通販で申し込んじゃったって。あああ。

それから、お義父さんは毎週一回引き売りにやって来る魚屋さんや豆腐屋さんから必ず何かしら購入していて、これも半ば「掟」と化しているんですけど、それらがかなり高価なことが分かりました。「長年の付き合いだから」と必ず購入するそれらの品々、確かに品質は悪くない、というかかなり高級なんですけど、例えば豆腐一丁が450円ってのはどうよ。それをお義父さんったら、四丁も買ったりしてる。「あそこの爺さんは必ず買うから」ってんで、わざと利幅のある商品を仕入れてきてるんじゃないかって、疑心暗鬼になっちゃいます。確たる証拠はないですが。

まあ、お義父さんが自分のお金でほしいものを買うんだから、別にいいんですけどね。ただ、不当に高く買わさてれることがあるとしたら、それはやっぱり「気をつけて」と言ってあげるべきかなと。

こないだは、お義父さんの発案でお風呂場に浴室乾燥機をつけられないかなと業者に見積もりをお願いしてみたんですけど、善意か商魂かはわかりませんが、やたら大規模なリフォームを提案されました。あれもつけて、これもつけて、バリアフリーで、お年寄りには最適ですよ〜って、もんのすごい見積もり額に膨れあがってました。さすがに高額すぎて、お義父さんも一瞥するなり「却下」でしたけど。

大手企業のサラリーマンだったお義父さんの世代はたぶん、年金収入が最も高いレベルにある人たちだと思いますけど、そういう世代を顧客として照準定めて、いろいろと売り込みに来る業者がこれまでにたくさんいたんだろうなあ、そしてこれからもたくさん来るんだろうなと思います。ちょっと今度床下や天井裏をのぞいてみようかしらん。まさか換気扇がどっさりついてるなんてことはないでしょうね。