インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

樹挪死,人挪活。

 中国人の同僚から“樹挪死,人挪活。”と書かれたメールをもらいました。“挪(nuo2)”は「移す」とか「動かす」という意味ですから、樹は環境を変えると枯れちゃうけど、人は環境を変えることで活きるということですかね。私がいまの職場を去ると知って贈ってくれた言葉です。私は勝手に「捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉を思い出していました。
 「捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」というのは、熊本に住んでいたとき、地元の漁師さんから聞いた言葉です。漁に出ていて船がひっくり返ったとき、その船にすがりついているだけが良策じゃない、思い切って手を離してみると、案外浅瀬で背が立った……ということもあるんだと。
 私はこの言葉を、これまで転職をするたびに何度も思い出してきました。転職するとき、特に次の展開がなかなか開けないときには誰でも不安になるものですが、この言葉を思い出すと何となく楽観的な気持ちになれるんですよね。これからは“樹挪死,人挪活。”も座右の銘に加えたいと思います。
 ……と思っていたところ、偶然目にしたちきりんさんの「Chikirinの日記」の過去エントリにこんな記述がありました。

「知ってる情報はもったいぶらずに全部、お客様に渡せ」と、その昔、上司によく言われました。情報だけじゃなく、考えたこと、知見とか洞察という類のモノ、知的財産的なもの、すべてです。
これは、価値ある情報を、「抱え込むな」、「出し惜しみするな」、「隠すな」、「もったいぶるな」、なぜなら「全部出しきったら、翌日はまた、新たに価値あるものを見つける必要がでてくる。そうしたらお前はもっと努力するし成長するよ」という意味です。
『守る組織、守る人』http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100418

 これって、“樹挪死,人挪活。”や「捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」と同じようなことを言ってるなあと。正直に言うと私、何となくいまの職場で定年までやっていけるかなあと漠然と考えていました。もちろんこれまで転職を繰り返してきたので今度はちゃんと「勤め上げよう」というポジティブな気持ちもあったんですけど、どこかで守りに入っている部分があったかもしれません。
 わかりました。かくなる上はこれまで作ってきた教材や教授法やその他中国語教育に関する一切合切をみんな誰かに渡すなりこのブログに載せるなりして“共享”しようと思います。といったって大した仕事はしてきませんでしたが、まあどこかで誰かの役に立てるかもしれません。