インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ユネスコによる「無形文化遺産能楽」

 午前中の授業が終わったあと、急ぎ国立能楽堂に駆けつけました。場内には空席も目立ちましたが、いやあ、素晴らしい舞台でした。
 能「恋重荷」(金春流)は、「こいのおもに」という題名とはうらはらにとても静かな能でした。シテの怨霊みたいな面がものすごい迫力でしたが、少々「うつらうつら」としてしまいました。すみません。
 狂言「隠狸(かくしだぬき)」(和泉流)。理屈抜きに面白いんですけど、狸狩りの名人・太郎冠者が持ってくる狸、まるでアンティークのテディベアみたいなぬいぐるみで、かなり萌え。こんな小道具もあるんですね。
 能「安宅」(喜多流)は初めて見ましたが*1、もう圧倒的な舞台で心底堪能しました。狭い能舞台に、シテと子方を含めて十人もの山伏が登場するんですから、ものすごい迫力です。歌舞伎十八番の「勧進帳」の元になったというこの能、安宅の関で義経を捕らえようとする頼朝の配下の富樫何某と、武蔵坊弁慶との対峙がこれまたものすごい迫力。
 以前、子方の少女が舞台上で「うつらうつら」しちゃって、こっちは「うつらうつら」するひまもなくハラハラしたことがありましたが(^^;)、今日義経を演じていた子方の、甲高い声の少年はなかなか立派でした。
 こんなに素晴らしい舞台なのに、空席が目立ったのは残念でした。まああまりお安くないですからね。私が見たのは一般向けの席では一番安いC席ですけど、それでも6000円もするんだもん。でも、出演者の多さと、芸のすばらしさと、衣裳や小道具の美しさからすれば、十分にその価値はあると思います。
 国立能楽堂で公演が行われるときには、たいがい能楽専門書店の「能楽書林」や「檜書店」が販売ブースを出しているんですけど*2、今日は素晴らしい掘り出し物がありました。それが、これ。

 Amazonでもひっかからないこのマイナー本、現代に伝わっている能楽の演目のうち、中国そのものが舞台になっているものが二十数曲あるらしいんですが、それを一つ一つ解説しているという、も〜よくまあ出版してくださいました的な一冊です。いま稽古している「猩々」「西王母」をはじめ、「咸陽宮」「皇帝」「枕慈童」「邯鄲」……などなどの項目が並びます。素晴らしい。他にも「張良」「項羽」「鍾馗」「楊貴妃」……って、ホント、中国との深い縁を感じさせる演目が能にはたくさんあるんですね。中国語を学んでいるみなさま方、あとチャイニーズのみなさま方も、ぜひ能楽堂へ足をお運びください。

*1:というか、私は毎回初めて見る演目ばかりですが。

*2:あと、能楽グッズを売ってる売店や、食事ができるレストランもあります。