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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

立ち食いそば

 柳家喬太郎師匠じゃないですけど、立ち食いそばが大好きで。師匠は「コロッケそば」とか「ウインナー天そば」をよくマクラに使ってますが、私はもう「かき揚げそば」ばっかり。
 いつも朝食は、恩師のオススメにしたがってグリーンスムージーだけ*1なんですけど、特に寒くなるこの時期、最寄り駅近くに点在する立ち食いそば屋さんの誘惑にはどうしても勝てず……。
 うちの最寄り駅は高田馬場ですが、朝から晩まで学生と酔客と異国の方々がどっと入り交じるこの街には質屋と居酒屋とラーメン屋がたくさんあります。ラーメンも大好きなんですけど、学生街にあるためかどのお店もだいたい味が濃くて油が強くて若者向き。中年の私にはちょっとしんどい食後感のお店が多いです*2。その点そばはもたれないし、お腹のこなれも早いですからね。
 富士そばとか小諸そばみたいな大手(?)チェーンもあるんですが、私が一番好きなのは「吉そば」です。HPによると都内に14店舗しかないみたいですね。私が知ってるのは高田馬場と、あと中目黒だけ。店舗と時間帯によるのかもしれませんが、早朝の高田馬場店のかき揚げそばはかなりうまいです。麺はもう、これは350円の立ち食いそばですから多くを求めませんけど、つゆは変な雑味がしないし、何よりかき揚げの揚げ方が上手。衣がぼってりしていなくて、そばを食べ進むうちにほどよくほぐれて麺に絡むんです。葱をかき揚げの上に乗っける美意識も好き*3。店内のインテリアも比較的シンプルで好き。これ見よがしに上等そうなでっかい昆布が飾ってあるのも、何だかよく分からないけど好き。遠心力を使ってそばの湯切りをする(たぶん)マシンがあるのも好き。
 ところで、中国人留学生と話をしていると、日本は朝ご飯が充実してないと言われることがよくあります。確かに、中国に限らずアジアではたいがい早朝からさまざまな屋台が出ていて、いろんなものが食べられますよね。日本だと警察&ヤクザがすぐ出張って来ちゃうので、こういう“早點”のバリエーションがとても少ないんです。まあ最寄りのコンビニでパン屋おにぎりを買うか、ファストフードのモーニングメニューになっちゃう。
 だから立ち食いそばなんか、数少ない日本の“早點”だと思うんですけど、こと中国人留学生に限って言うと、まず99.9%「食べたことがない」と答えるんじゃないでしょうか。周りに中国人のお知り合いがいたら、ぜひ聞いてみてください。
 なぜ中国人は立ち食いそばを食べないのかな、そばそのものを食べ慣れないのかなと思っていたんですが、よく聞いてみるとそうではなく、中国人は基本的に「立ち食いをしない・立ち食いができない」らしいんですね。え〜、だって中国人は焼き芋とか羊肉串とかハンバーガーとかフライドチキンとか食べながら歩いているじゃない、と思うんですけど、よくよく聞いてみると、どうやら食器を使う食事を立って行うのがどうにも気持ち悪いらしい。つまり箸やお椀を持ったまま立って食べるのがダメと。
 そういえば農村なんかで、野外で食事している光景を見たことがありますが、みんなしゃがんで食べてました。もちろん例外的な人はどこでもいますけど、とにかく中国人は食器を使う以上、どこかに座りたい、座れないまでもしゃがんで食べたいという欲求が深く身体に刻み込まれている人たちらしいのです。
 それでもしつこく「じゃあカップに入った飲み物なんかをストローで吸いながら歩くのは? カップもストローも食器の一種じゃない?」と聞くと、「う〜ん、それはまあOKかな」と。中国社会も変化が早いので、最近の、特に都会に住む若い人たちの中には、立って飲食することに違和感を覚えない人たちも増えてきているようです。それでも「箸と茶碗を持ったら、それはもう立ってるだけで足がうずうずして気持ち悪い」と言うんですね。そりゃ立ち食いそばは完全にアウトだね。でもまあ、高田馬場の吉そばもそうだけど、最近は椅子席もあるお店がたくさんあるので、日本で暮らしている間に一度試してみてほしいと思います。

*1:これで体重が3kg減りました。

*2:なんだかんだ言ってほとんどのお店に一度は行ってる。

*3:高田馬場店はこの時間帯に働いてるおじさんだけの美意識みたい。他の時間帯に行ったときは最初からつゆの上に散らしてました。