インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

科幻通訳

  先日、日本SF大会がらみで中国の作家と評論家のプレゼンを通訳する仕事があったのですが、すごく楽しい仕事でした。
  お二人とも若くて、いわゆる「80後」の世代ですね。SFはもちろんFT*1やミステリーやホラーなどなどが大好きで、マンガやアニメに囲まれて育ち、今もそれらへの愛を失っていないと公言するお二人。
  「愛を失っていない」とはおおげさに聞こえるかもしれませんが、中国ではSFやマンガなど子供の読むもので、大学生や社会人が電車でそういった本を広げているのは恥ずかしいという風潮がまだまだ根強いのだそうです。
  それでもこのお二人をはじめとする若い人たち(主に北京が中心だそうですが)は、大学で「科幻(SF)」や「奇幻(FT)」を研究し、創作し、評論や研究を発表し、連続講座を開催し……と精力的に取り組んでいるよし。中国では主に政治的な要因でSFやFTが大きな打撃を受けた時期が何度かあったようですが、ここ数年環境が大きく変わり始めたと言っていました。それまでほんのわずかしかなかった雑誌に多様性が見られるようになり、中国オリジナルや翻訳物の作品が次々に出版されるようになり、ファンによる自発的な活動が行われるようになり……ひとことで言えば「民間化」が急速に進んでいるとのことでした。
  いろいろな雑誌や作家の紹介があったのですが、一番興味を引かれたのは昨年創刊された『新幻界』という月刊雑誌です。雑誌といってもこれは紙媒体ではなくてネットからダウンロードする「ウェブジン」。デザインやイラストも凝ってますし、一部の小説は「音声版」も作っているなど、とても斬新な雑誌です。日本でもこういった形のものがあるのかどうかは不案内なんですが、会場からは「おおっ」という声が上がっていました。
  私は高校生の頃まではけっこうSFが好きでよく読んでいた方なのですが、その後は少々縁遠くなっていて、まさに中国での風潮をそのまま体現したような人間なんですけど、またいろいろと読みたくなって、仕事の帰りに伊藤計劃の『虐殺器官』を買ってきました。そこからかい!と、今回仕事をくださったクライアントからツッコミが入りそうですが。

*1:ファンタジーのことをこう書くのだそうで。この仕事で初めて知りました。