インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

気疲れするヘアサロン

  「ヘアサロン」というか「美容室」というか、とにかくそこへ髪を切りにいって何が困るって、「スタイリスト」というか「美容師」というか、とにかくその方々との会話です。教師にあるまじきことですが、私はどちらかというと人見知りをする人間なものですから、会話が続かないんです。
  「毎日暑いですね〜。僕たちは一日中エアコンの効いた部屋で髪切ってますから、ど〜ってことないスけど」
  「そうですね」
  「ヘアカラーも最近は明るすぎない色味にして、そこにグレーとかブルーなんかを効かすのがカッコいいんですよ〜」
  「お願いします」
  スタイリストさんも困っちゃうでしょうね。
  一番困るのは、前にも書いたことがありますけど、髪を洗ってもらう時です。ここでは私、いまだかつて「大丈夫です」以外のセリフを口にしたことがありません。
  「(服が濡れないようにカバーを首に巻いて)きつくありませんか」
  「大丈夫です」
  「お湯加減はいかがですか」
  「大丈夫です」
  「力加減はいかがですか」
  「大丈夫です」
  「かゆいところはございませんか」
  「大丈夫です」
  「洗い足りないところはございませんか」
  「大丈夫です」
  「すすぎ足りないところはございませんか」
  「大丈夫です」
  ……単に「大丈夫です」の一言だけですけど、けっこう気疲れするんです。あまり大きな声で言うのも滑稽だし、第一水が跳ねないようにと顔にかけられているタオルがあって口が動かしにくいし、さりげなく、こう、特に不満はないですよという感じを漂わせながら言うのが疲れる、というか正直に言うと面倒くさい。
  「大丈夫です」以外のセリフも試してみたことがあるんですが、「いいです」だとどこか快感を貪ってるような雰囲気が漂いますし、かといって「適温です」とか「ばっちりです」とか「最高です」などとも言えませんしねえ。
  だいたい「かゆいところ」なんて具体的に指示できるでしょうか。「側頭部、右耳の上5センチくらいのところ」などと言うんですかね*1。「洗い足りないところ」や「すすぎ足りないところ」にいたっては、そりゃ私に判断を求められても困る内容だと思うんですけど。
  いつ何時質問が飛んでくるかと身構えているので、本当に疲れちゃいます。それと、これは多くのヘアサロンが見逃している点ですが、カットにせよシャンプーにせよ、椅子のサイズが女性用なのか、男性が座ると肘の位置がとても不自然で、肘掛けの幅もとても狭くて、とにかく窮屈な思いをするんですよね。男性用に椅子を用意している、ないしは、その都度肘の位置などを調整しているようなヘアサロンに行き当たったことがありません。
  どこかに黙って身を任せることができる――理想を言えば、シャンプーの間に眠り込んでしまうような――ヘアサロンはないものかしらん。

*1:昔々、吉田戦車のマンガで「全部」と言っているキャラがいましたな。