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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

中国のワイン

  かつてバブルにわいたどこかの国と同じように、いま中国は(ごく一握りのお金持ちだけですけど)世界中の高級ワインを買いまくっています。とはいえ、普通のスーパーにはあまり国外産のワインは置いていません。中国産の安い“紅酒”がほとんどです。
  留学に来ている学生の中には年配の方もいて、「たまには学食じゃないところへ気分転換に行きましょう」と誘われたので、ワインショップに行ってみました。

  金台夕照駅からほど近い嘉里中心(ケリーセンター)のショッピングモール奥、ホテルの一階にある“Top Cellar”というワインショップにはフランスワインも数多く並んでいましたが、ブルゴーニュだと白はマコン、赤はボジョレといった廉価どころが中心。コート・ドールのお高いワインはあまり売れない……というか、やんごとなき方々が直接取り寄せるんでしょうね。私みたいにお店で直接買う客はその消費レベルもたかがしれていますから。

  ただ、同じショッピングモールの地下一階にあったスーパーには、ボルドーの格付けシャトーものなども並んでいました。セラーらしきガラスケースに入っていましたから、お高めのワインはこちらで買う方がよいかもしれません。

  “Top Cellar”では、その場でワインを飲むこともできます。安いスパークリングをということでクレマン・ド・ブルゴーニュを選びました。一本170元(約2500円)くらい。きっちり冷えていて、スパークリング用のグラスも出してくれます。三人で飲んだので、ちょうどグラス二杯分くらい。辛口ですけど、ほんのわずかに「ほの甘」で、疲れがとれますね。とてもおいしかったです。

  大学からほど近い金源購物中心にも“酒实佳90PULS”というワインショップがありました。フランスや新世界のワインも売っていますが、せっかく中国に来たのだから中国のワインをと店員に聞いてみたら、少ないながらもいくつか魅力的なのがちらほらと。
  説明してくれた若い店員はアルバイト学生でした。農業大学で醸造学を学んでいるんだそうです。彼によれば、中国の赤ワインは絶対的多数が“赤霞珠*1”、次に“美乐*2”、“西拉*3”がメジャーどころだそう。白ワインはかなりマイナーで、土着品種のほか、“霞多丽*4”くらいしか市場には出ていないそうです。私が一番好きな“鄢皮诺*5”や“雷司令*6”も試験的には作られているそうですが、市場のニーズが低く採算に合わないため、ワインが市場に出回ることはまずないんだそうで。いつか中国産のピノ・ノワールリースリングを飲んでみたいですねえ。
  中国のワインと言えば“張裕(チャンユー)”や“長城(グレートウォール)”、“王朝(ダイナスティ)”といった大手メーカーが有名ですが、このワインショップで紹介されたのは小規模ワイナリーの“怡园(グレース)”でした。ここは少量生産なので、そのぶん緻密な醸造を行っていて品質も高いのだそうです。とりあえずシャルドネを買ってきましたが、ううむ、大学の寮には冷蔵庫がない……。そこで寮の売店に頼み込んで、冷蔵庫に置かせてもらうことにしました。いつもよりたくさんものを買ってご機嫌を伺ったのですが、当然のことながら「ぶーぶー」言われました。ごめんなさい。

  学生の何人かが留学中に誕生日を迎えるというので、学内のケーキ屋でバースデーケーキを買ってきて、簡単なパーティを開きました。そこにこのシャルドネを差し入れ。

  樽香の効いた、重厚な味わい。これはなかなかおいしいです。210元(約3150円)とそれなりにいいお値段です。
  近所のスーパーでも「よさげ」なものを見つけました。“丰收(ハーベスト)”の“典藏赤霞珠干红葡萄酒*7”。イタリアの高級ワインを思わせるような、どっしりとした瓶でした。こちらは150元(約2250円)。

  ヴィンテージ表記がないので多分新しいんでしょう、若い感じでしたが、きちんとカベルネらしさがあって、とてもおいしいワインでした。雰囲気的には新世界や南仏のような果実味たっぷりのジューシーなタイプ。瓶の首についていた説明書によると、「フランスはボルドー地方と同じ緯度の畑から収穫したブドウを使い、日当たりのよい斜面の選りすぐったブドウを遅摘みし、フレンチオークで熟成させた」んだそうです。
  考えてみれば中国は世界第四位か第五位というブドウの一大生産国です。もちろん食用ブドウが多いのですが、特に西の乾燥した地方などは、風土的には高温多湿多雨の日本よりよほどワイン用のブドウ栽培に適しているはず。これから十年二十年三十年たったら、中国は必ず世界のワイン市場でそれなりの地位を占める国になると思います。

*1:カベルネ・ソーヴィニヨン。「カベルネ」は“解百纳”と表記されることもあって、“赤霞珠(カベルネ・ソーヴィニヨン)”、“品丽珠(カベルネ・フラン)”、“蛇龙珠(Cabernet Gernischt/Cabernet Gemischtという珍しい品種)”が“三珠”らしいです。

*2:メルロ。“梅鹿辄”や“梅洛”とも表記されるよう。

*3:シラー。“希瑞”、“色拉”、“希拉”などとも。“设拉子”はオーストラリア風に「シラーズ」ですね。ほかにも“希哈”という表記も。「シハー」という感じですから、フランス語の発音に似ています(^^)。

*4:シャルドネ。“莎当妮”や“夏多内”などとも。

*5:ピノ・ノワール

*6:リースリング。“蓝司令”、“薏丝琳”などとも。

*7:「プレミアム・カベルネ・ソーヴィニヨン」という感じですかね。“干红”は「辛口の赤ワイン」。かつての「赤玉ポートワイン」のように、ワインというと甘口という概念がまだ残っているので、わざわざ“干(ドライ)”と言うんですね。