インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

生乾きの雑巾

  よく知られているワインの劣化として、コルクが原因で起こる「ブショネ」というものがあります。
  “Bouchonne”――フランス語でワインのコルク栓などを意味する“Bouchon(ブション)”から派生した言葉で、「コルク臭」などと訳されます。とはいえ、栓として使われているコルクの匂いがワインに移ったというような単純なものではなく、主にTCA(2,4,6-トリクロロアニソール)という物質によってワインが「汚染」され、本来の香りが変質してしまった状態を指します。
  この「汚染」、発生頻度がけっこう高く、コルク栓をしたワインの5%ほどはブショネだと言われています。ブショネは不可抗力といってもいいので、樹脂の代用コルクやスクリューキャップに切り替えない限り、必ずこの頻度で発生します。ワインを二十本飲めば、そのうちの一本が「アタリ(いや、ハズレ?)」になる確率ですから、けっこうな頻度ですね。
  ……と、ワインスクールなどで習うんですけど、これまで「これはブショネだ」とはっきり自覚できたワインはありませんでした。これまで何百本と飲んでいるはずですから、確率的には何度もブショネに当たっているはずなのですが。わはは、その程度の嗅覚ということですな。
  まあ、言い訳をすると、ブショネは軽度から重度まで幅があって、軽度のものはプロでないと察知できないそうで。それにあらかじめ選んでブショネの匂いを嗅ぐこともできないので、ヘンな話ですが、一度体験してみたいものだと半ばブショネに当たることを心待ちにしてきたのでした。
  そしたら先日、その重度のブショネに見事に当たりました。ルロワの「サン・ヴェラン」。よりによって大好きな生産者のワインで当たるあたり、今年はツいている(?)のかもしれません。
  ブショネはよく「濡らした古雑巾を陰干しして生乾きになったような匂い」と聞かされてきましたが、そのものズバリの匂いでした。本当にこんな匂いがするんですね。シャルドネらしさが微塵も感じられません。う〜ん、これはいくらルロワのワインでもちょっと飲めません。あああ、もったいない。TCAは人体には全く害がないそうですから、料理酒にでもします。