インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

1999 Pommery Brut Millesime

  パリ東駅からTGVでわずか45分ほど、シャンパーニュ地方の中心都市、ランスにやってきました。
  シャンパンはこの街のいわば「地酒」。というわけで、シャンパンの酒蔵ならぬメゾン(ドメーヌ)見学をしに行きました。駅の売店で街の地図を買い、ざっと眺めていると、「Domaine Pommery」の文字が。大手シャンパンメーカー、ポメリーです。で、早速タクシーで向かいました。
http://www.pommery.fr/
  本館らしき建物の前で降ろされたのですが、人が誰もいません。正面の扉も閉まっています。これはすでにクリスマス休暇に入ってしまったかなと諦めかけたのですが、扉を押すと開きました。でも中は真っ暗。奥に大きな青い壁があるだけです。かなりひるみましたが、おそるおそる進むと自動ドアがガーッと開きました。中は広いホールになっていて、手前に受付があり、あちらこちらにたむろしている観光客がいます。やっぱり営業していたんですね。それにしても外見のあの素っ気なさ。フランス人の営業戦略って、よくわかりません。
  受付でチケットを買いました。高いのから安いのまで四種類あって、これは見学の後試飲するシャンパンの値段によって決まっています。つまり見学内容は同じで、試飲する酒が異なるわけ。私は下から二番目に安い「ミレジメ」を選びました。12ユーロ。
  「ミレジメ」は英語の「ヴィンテージ」。シャンパーニュはその多くが「ノン・ミレジメ」、つまり生産年が記載されないのですが、一部に通常のワインと同様生産年の入ったものがあります。一般にこちらの方がちょいと高級です。12ユーロというと1500円くらいですか。東京でシャンパンをグラスで飲んでもそれくらいはするので、見学ツアーつきということを考えると、けっこう安いかもしれませんね。
  ツアーはフランスなまりの英語でしたが、けっこうよく分かりました。ポメリーのカーヴは地下の巨大空間で、時代がかった人工の洞窟が迷路のようにあちこちへ伸びています。写真を撮ろうとしたのですが、うっかりして昨晩電池を充電し忘れてました。ま、『ルパン三世カリオストロの城』に出てくる、ルパンと銭形警部が落とされた地下の回廊を想像してください。
  地下の回廊には横穴がたくさん伸びていて、それぞれに世界の都市名がつけられています。そこに熟成中のシャンパンが大量に並んでいました。いや、かなり壮観な眺めです。普通の瓶(750ml)だけでなく、マグナム(1500ml)やジェロボアム(3000ml)、更に大きな瓶も並んでいました。何十年、あるいは百年以上熟成されている瓶も分厚いホコリをかぶっていましたが、ガイドさんの説明によると「すでにシャンパンと言うよりは、褐色の液体という感じで、泡もほとんどありません。でも味わい深いですよ」とのことでした。
  それから面白かったのが、回廊のあちこちに奇妙な現代アートが展示されていることです。ガイドさんは「ウエルカムアート」だと言っていました。怪しげなアニメーションやら、砲身の折れ曲がった戦車やら、小鳥が放し飼いになっているところにエレキギターがいくつも水平におかれていて、小鳥が止まると「ビヨーン」と音が鳴るものやら、なんだか訳が分かりません。そういえば閉まっていると誤解した正門の上にも靴が二足ぐるぐると回っていました。あれもこれも、みんな現代アートだったんですね。ポメリーはメセナということでしょうか、若い芸術家を支援しているようです。

  いや、見応えのあるワイナリーでした。最後に試飲のシャンパンを飲んでおしまい。ほろ酔い気分でランスの中心部までてくてく歩き、ランス大聖堂を見学してホテルに戻りました。ここはかつて、フランス歴代の国王が戴冠式をやった場所なんですよね。ジャンヌ・ダルクもここにいたことがあるのかと思うと、歴史を感じます。一番奥にある、有名なシャガール作のステンドグラスもすてきでした。
  街はクリスマスイブ直前で、活気があります。パリの街は意外なほどクリスマス的イルミネーションが少なかったのですが、ランスの方がクリスマスクリスマスしてますね。