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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

うわあ

通訳・翻訳

  いささか古い話になるけれど、先般福田首相が訪中した際、通訳者の「誤訳」がニュースになった。

「誤訳」で福田首相の顔色一変 日中首脳会談
12月29日11時26分配信 産経新聞
  北京の人民大会堂で28日行われた福田康夫首相と温家宝中国首相の首脳会談。直後の共同記者会見で「台湾独立」に対する表現をめぐり、福田首相が顔色を変える一幕があった。「(独立を)支持しない」という福田首相の発言を温首相が説明。これを会場で日本語に訳した通訳が「独立反対を表明した」と強い表現に「誤訳」したためだ。会見中に、すぐ資料を取り寄せた福田首相は自らの発言が「支持しない」だったと改めて説明するはめに。台湾問題の微妙さが改めて浮き彫りになった瞬間だった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071229-00000904-san-pol

  この件に関して、温家宝は本当に「反対」という言葉を使い、通訳者はそれを忠実に訳しただけではないか、つまり産経新聞の「誤報」じゃないのかという主張がネット上に散見された。
  私はたまたまこの生中継を見ていたのだが、問題の部分についてはあまり注意もせず、聞き流してしまった。で、録画しておけばよかったとくやしがっていたら、通訳スクールの教務が「教材に使いましょう」と映像ファイルを送ってくださった。
  早速ディクテーションしてみるに、温家宝首相とそれに続く通訳者の発言はこうなっている。

温家宝:中方重视日本在台湾问题上所表示的坚持一个中国,反对台独的立场。
通訳者:中国側は日本側が台湾問題において表明した、一つの中国を堅持し、台湾独立に反対しないとの立場を重視します。
温家宝:对于福田首相今天严正地表示不支持台湾入联公投,我们表示赞赏。
通訳者:そして福田総理は本日、厳正に、台湾のいわゆる国連加盟への賛否を問う住民投票を支持しないという立場を表明していただいたことを評価したいと思います。

  確かに温家宝は“反对台独(台湾独立に反対)”と言っている。“入联公投(国連加盟の是非を問う住民投票)”については“不支持”だ。いずれも通訳者は正しく訳している。
  わははは、一流の通訳者なら、こんなところで誤訳などしませんよ、産経新聞はせめて中国語のわかる記者を派遣すべきですな……などとイヤミを書こうと思っていたら、おや? 何度聞き直しても、通訳者はこう言っている。

台湾独立に反対しないとの立場を重視します。

  ……うわあ。