インタプリタかなくぎ流

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中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧

中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書 599)
  中国から世界各地に亡命したウイグル人への聞き取り調査をまとめた本。いずれの亡命者も「東トルキスタン」独立運動に関与したとして中国政府から苛烈な弾圧を受けている点が共通している。ところが、彼らの証言によれば全くの冤罪も少なくない。東大大学院で学んでいたウイグル人留学生で、現在は新疆で収監されているトフティ・テュニヤズ氏の事例や、核実験の後遺症に苦しむ現地の人々の声も紹介されている。それにしても相変わらず酸鼻を極める中国政府の弾圧手法。読んでいて、本当に胸ふたぐ思いがする。
  著者の水谷尚子氏は発表されている論文の内容やその掲載媒体*1から保守派の論客だとくくられてしまうようで、私の勤めている職場などではたぶん受けが悪いと思う。でも文章を読めば中国人に対する冷静で真摯な姿勢をそこここに感じることができる。単身現地に乗り込んで生の現場に取材することを基本においておられることも含め、共感する部分も多い。

これまで筆者のレポートに関しては、「保守派」「愛国者」を自認する方々から特に強い関心を示していただいた。ただ気になっているのは、この問題が「敵の敵は友」的な発送から「中国を叩くための材料」として扱われる事も少なくないことである。
例えばこの問題に関心を抱いて、ネット上で「ウイグル人を救え」といったアクションを起こそうとする若い人達には、民族問題の政治・歴史的な背景を理解するより先に、「単純な話」に飛びついて「正義」を主張しようとする姿勢が感じられる。(中略)
自分たちの内輪の中で流通する「情報」によって「事実」を裁断するかのような現象は、まるで中国の「反日団体」に所属する憤青たちがよりどころとしている「日本知識」と、現実の日本とのギャップを彷彿とさせる感がある。
――同書の「おわりに」から

  新書ですぐに読了できるから、チベット問題ほどメジャーでない東トルキスタン問題に触れる入り口としても、また中国における少数民族差別の一端を知る手がかりとしても貴重な本だと思う。

*1:例えば『諸君!』とか。