インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

たのしいのみかい

  id:suikanさんのお誘いをいただいて、私にとっては「たなぼた」ともいえる飲み会。つまりごちそうになってしまった、ということ。恐縮です。

  飲みながら話題になった「通訳者や翻訳者を目指す人が、通訳者や翻訳者に関するオタク的知識に欠けている」という件、実は私などがエラソーに言うまでもなく、大先輩方が昔からさまざまな表現で語ってきたことだ。
  例えば私の恩師は、いろいろな専門辞書を見つけるたびに買い込むので、本棚の一部が辞書で埋め尽くされていると言っていた。辞書コレクター、ないしは辞書ハンターだ。今ではインターネットがここまで普及してしまったから、紙の辞書に当たる度合いは以前とは比較にならないほど減ってしまったけれど、翻訳のトライアルを受けようという段になっても「日中中日辞典一冊しか持ってません」では、その仕事に対する意気込みを疑われても仕方がない。
  翻訳者の山岡洋一氏は、『翻訳とは何か――職業としての翻訳』でこう述べている。

(翻訳学校で)最近読んだ翻訳書をあげるよう求めても、答えはほとんどない。好きな著者の名前を挙げられる受講生はほとんどいないし、まして、好きな翻訳者の名前はあげられない。そもそも、翻訳家については名前すら全く知らない。野球に熱中している少年なら、野球選手の名前はいくらでも知っているし、町のテニス・クラブに通う主婦なら、ウィンブルドンで上位に入る選手の名前はみな知っている。翻訳に関心があり、翻訳を学習しようとしているはずなのに、翻訳家の名前すら知らないのだ。

  私は通訳者になりたいと思ったときから、「通訳者本」コレクターになった。ほとんどは英語通訳者の著書だが、現場での手に汗握る体験談から、通訳スクールでの勉強のコツまで書いてある。通訳者の仕事現場はたいてい一般人が入り込めないところが多いから、こうした先輩方の体験記は業界内の雰囲気や常識やマナーなどをうかがい知るのにとても役立った。スクールに通う人が読まない手はないと思うのだけれど。