インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

いい講師にめぐりあえる縁

  この秋から週に一度、とある学校に通い始めた。学校というよりカルチャースクールだ。あまりにもスノッブな講座なので、何を学んでいるかは伏せておくとして、とにかくすごく楽しみにして開講第一日目を迎えた。
  しかし講師が話し始めて数分、声には出さないものの、こうつぶやいてしまった。
  「だめだ、こりゃ」
  この講師、話し方が支離滅裂で、まったく要領を得ない。頭に思いついたままを未整理なまましゃべっているから、話題がどんどんずれる。ずれてずれて、収拾がつかなくなると、「ま、そゆこと」でまとめてしまう。
  技術を習得するための方法をあれこれ語るのだが、語彙が貧弱で「何というか、その」や「あれなのよ、あれ」を多発する。結局詳しく説明しきれないまま、最後は「ま、場数を踏めばわかるようになるから」。う〜ん、そりゃまあそうでしょうけど。
  いくら何でもこれはひどいと思って、二十人ほどいる受講生を見渡すが、私のような不審そうな顔や怪訝そうな顔をしている人はいない。私が人の話を上手に聞けていないのだろうか。
  通訳の仕事をしていたからか、まるで相手に挑みかかるように話を聞きとり、その場で腑分けするくせがついているのかもしれない。そういえば「よくテレビに『ダメ出し』してる」と指摘されたこともある。要領を得ない発言があると、すぐに人生幸朗みたいな(古いね)ツッコミを入れているんだそうだ。
  仕方がないから、授業終了後に事務局へ行き、同じ内容で曜日の違うクラスに振り替えた。そのクラスの講師も同じようなものかも知れないが、少なくともこの講師についてこの先半年も学んでいく気がしなかった。
  ひるがえって我が身を省みるに、職場ではこの秋からいくつか新開講の講座を受け持っている。新しいことを学ぼうとわくわくしながらやってくる生徒さんの期待に、はたして応えられているだろうか。
  次の週、別の講師のクラスに出てみてびっくりした。理路整然としていて、とても分かりやすい。教科書以外にも、ご自身の体験からつかんだ豆知識をふんだんに披露してくれる。なにより、教えるのがとても楽しいという雰囲気が伝わってくる。同じ学校の同じ課程で、これほど質が違っていいものか。私が前のクラスの曜日を選んだのは全くの偶然だったが、これほど違っていると、やはり「運」や「縁」というものはあるのだなと思う。