インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

矯正終了

  二十五ヶ月間歯に装着していたブラケットを外す日がとうとうやってきた。
  取りつけと違って、取り外しはあっという間に終了。ペンチみたいなものでブラケットを壊し、歯の表面に残った接着剤を研磨して取り去るだけ。「ガチャガチャ」した外見のブラケットがない歯は、何というか、間抜けなほどあっさりとして見える。何かが足りない感じ。取り外してもまだ何となくブラケットの感触が歯に残っているのがおかしい。
  これから先は、矯正した歯がまた動かないように、リテーナー(保定器)という器具を上下の歯に装着する。最初の六ヶ月は二十四時間つけているのが理想だそうだ。このリテーナー、初めてつけたこともあって違和感がものすごい。ブラケットを初めてつけた時の違和感と似ている。もっともブラケットと違っていつでも取り外しができるから、その「被拘束感」はいくぶん軽いような気がするが。
  一番困るのがうまくしゃべれないこと。しゃべるのが商売なのにどうする? 試しに五十音を発音してみると、かなりの音が明瞭に出せない。中国語も舌先が上の歯茎から上あごにかけてつく種類の音が軒並みアウトだ。
  リテーナーには上と下があるが、下の方は前歯だけを固定するので小さく、あまり発音の支障にはなっていない様子だ。しかし上は奥歯まで全てをカバーしている上に、上あごにぴたっとくっつく肌色のプレートの面積が大きい。無理に発音しようとすると、すぐに吐き気(えずいてしまう感じ)を催してしまう。これは困った。
  このリテーナー、外見は入れ歯によく似ている。違いはワイヤーになっている歯の部分だけ。入れ歯を入れるというのはものすごく辛いことなのだなあ。確かにこれで食事をしたらおいしくないよ。歯は大切にしなきゃいけないね。
  リテーナーはこんな感じ。外見は受け止め方によっては多少グロテスクだし、何だか自分の下着を見せるような(?)恥ずかしさもあるので、いちおう「続きを読む」仕様にしておく。


  ピンクのプレートが口蓋にぴったりくっついて、このプレートの端(歯列に合わせてギザギザになっている)と歯の表に出るワイヤーとで固定するわけだ。たったこれだけの構造なのだが、歯列にパチンと収まる。両端の彎曲したワイヤーがクリップのような働きをするのだ。もはや一種の工芸品だよ、これは。
  とにかくうまくしゃべれないので、しゃべる仕事用のリテーナーを別注文した。これは透明なプラスチックでできていて、歯にすっぽりかぶせるタイプのもの。口蓋に一切かからないので、発音の邪魔をしない。でもこれ、来週再度型取りをして、完成するのは数週間先だという。それまではしゃべる時にリテーナーをはずすしかないな。多少歯列が戻ってしまうかもしれないけれど、仕事をしないわけにはいかない。あらかじめ「発音がしにくくなる」と言ってもらえたら早めに注文しておいたのにと、悔やまれてならない。
  リテーナーによる保定は、数年続くそうだ。もっとも半年後以降は就寝時だけの装着でいいらしいけれど。ううむ、矯正が終わって喜んだのもつかの間、また「振り出しに戻る」という感じ。