インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

Water

  渋谷のQ-AXシネマで『孔雀』とこの『Water』のチケットを一緒に買ったのだけれど、なぜか別々に金を払えと言われる。まず『孔雀』の1800円を払い、おつりをもらって、改めて『Water』の1200円を払う。なぜまとめて3000円出しちゃいけないのかな?
  いきなりケチがついてしまった。1200円という料金で分かるように、これは三十分弱の短編映画。作家の吉田修一氏が、自作の小説を元に初監督したそうだ。
http://www.wisepolicy.com/water/
【ネタバレがあります/しかもかなりこき下ろしてます】

  脚本、演出、俳優の演技、どれも見るべきものがない。こんなものを、お金を取って劇場公開してはいけない。何より俳優がセリフだけでしか演技してないのが、いかにも底の浅い印象。俳優のキャリアや経歴が違いすぎるとはいえ、上で書いた『孔雀』の俳優たちとの、この差はなんなんだ。
  吉田氏の故郷だという長崎、その坂の多い風景に少々見応えはあった。でもそんなところに長所を求めてしまうほど他に見るべきものがないということだ。
  夏の終わりで、仲のよい水泳部の少年二人がいて、同性愛的な性的志向を自覚しているようなしていないようなで、兄が亡くなってて、一人は高校卒業後に東京に行くつもりでいて、コクトーの『オルフェ』で、『白書』で、んでもって「大胆な行動」で……って、あまりにも「つきすぎ」じゃない?
  吉田氏は「もう一回やったらもっとうまく撮れるという欲はある」と言っているそうだが、「じゃあ今回は会心の作じゃないんかい」と意地悪を言いたくなる。それくらいひどかった。
  ポスターの上部に、カンヌ国際映画祭のマークに使われているような月桂樹の葉の模様が三つあって、なにやらアルファベットが並んでる。てっきり海外の映画祭で三つも賞を取ったのだと勘違いしていたのだが、後でよく見ると単にそれらの映画祭で正式上映されただけらしい。あああ、こんなところにもケチをつけたくなる。☆☆☆☆☆。