インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

時をかける少女

  原田知世の「土曜日の、実験室!」から二十有余年、あの映画をロードショーで見た世代には懐かしいリメイク版。ただしこちらはアニメーション映画。
http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/
【ネタバレがあります】

  一切予備知識を入れずに見に行き、見終わってから気づいたのだが、このアニメーション映画は1983年の実写版『時をかける少女』の二十年後を描く続編ということらしい。原田知世が演じた芳山和子が、主人公・真琴のおばとして登場する。続編だから、筒井康隆の原作とはほとんど関係ない。時間旅行ができるタイムリープと、その技術(?)を使って未来から来た少年に好意を抱く、という設定だけ残して、自由に創作している。
  それにしても今時の高校生って、本当にあんな話し方をして、あんな学園生活を送っているのだろうか。そんな茶々を入れたくなるくらいベタな声優さんの演技ではあったけれど、とても楽しめた。
  音楽にバッハの『ゴールドベルク変奏曲』が使われていた。静かでちょっと不気味な実験室(理科準備室?)にはゆっくりしたアリアを*1、その直後、タイムリープを起こしたあとの急展開にはスピードのある第一変奏をもってくるなんて、うまい! しかもその後、真琴が過去を「調整」しようとして何度も繰り返すタイムリープのたびにも、それぞれ異なる変奏が使われていた。
  大詰めで、過去をかなり大きくリセットした時にはまたアリアが登場して、これは『ゴールドベルグ変奏曲』で最後にもう一度アリアが登場するのと同じだ。確かにあの曲は、最後のアリアを聴くと「振り出しに戻る」というか、何だか長い夢から醒めたような気分になる。大きくタイムリープして一から出直し、という雰囲気にぴったり。
  考えてみれば、タイムリープを使って繰り返す過去は、それぞれに少しずつ異なる人生の変奏みたいなものであるわけで、こういう選曲のこだわりはひとつの見識だなあと思う。★★★★☆。

*1:このアリアは『ハンニバル』でもレクター教授が弾いていて、こういうシーン御用達みたいになるのも何だか複雑な気分だけれど。