インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

幸福に驚く力

幸福に驚く力
  『ゲド戦記』の翻訳者である清水眞砂子氏の講演録。すごくおもしろい。私たちは物語を介して世界と関わっているとか、人生を肯定的にとらえたいとか、世界は自分が考えているよりもっと深くて広いとか、他の人が話したら何となく胡散臭く感じてしまうかもしれない内容なのに、この人の語り口にはどこかこう、こちらの背筋を伸ばさせるものが。

  こんなカテゴライズをするのも失礼だが、清水さんは思想的には六十年代から八十年代にかけてのフェミニズムやヒッピームーブメントなどと近しい、どちらかというと左翼的な立場にいる方のようだ。けれどちっとも教条主義的じゃないし、ご本人も言っているように「日本のこれまでのフェミニズムには、何となく背を向けてき」たというスタンスのよう。共感するところが多かった。
  翻訳についてもずいぶん紙面が割かれているが、これもご本人が前置きされているように翻訳の理論ではなく、翻訳の「職人」としての様々な雑感といった感じ。だがこれも、言葉の選び方や子どもの本を書く難しさなど、興味深い話でいっぱいだ。