インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

胡同のひまわり

  父と子・家族の絆・文革・四合院・変わりゆく街の風景……とくれば、これまでに作られたいくつもの中国映画が思い浮かぶ。いずれも忘れがたい印象を残す作品揃いだったけれど、この映画もまたしみじみとした味わいの佳作。
http://www.himawari-movie.com/
【ネタバレがあります】

  文革の初期に労働改造所送りとなり、そのため生まれて間もない息子と六年間も会えなかった父親。物心つく頃に不在だった父親は、その後一生にわたって息子との距離感をはかりかね、その距離を埋められずに悩む羽目となる。そしてそれは息子にとっても同じだった……。
  こういう「父と子の葛藤」ってどこの国にもあるんだよねえ。私も平凡な家庭ながら、お決まりのように父親には反抗して、説き伏せられて、家を飛び出して、でも結局頭が上がらなくてという、この映画の主人公みたいなことをずいぶん繰り返したクチなので、映画館の座席ではなんとなくもぞもぞ、居心地が悪かった*1
  監督の張楊は『愛情麻辣湯(スパイシー・ラブスープ)』や『洗澡(こころの湯)』といった作品を作っている人。この両作品にも共通するけれど、この人の作品は人情味たっぷりでわかりやすい作りだ。迫真のリアリティや、芸術性を追求することにはあまり執着していないような気がする。その点では同じ若手の賈樟柯作品より広く共感を得やすいんじゃないか。私は賈樟柯の方がよりイタくて、心に響くのだけれど。
  この映画ではもうひとつ、日本と同じように中国が直面している高齢化社会も主題のひとつになっている。でも大陸に行って、朝の公園を散歩してみるとよく分かるのだけれど、あちらのお年寄りは何だかずいぶん元気なんだなあ。この映画のラストにもほんの少し出てくるが、太極拳をする人、遊具を使って運動する人、扇子を手に踊っている人、棒を振り回している人、体をぺちぺち叩いている人、後ろ向きに歩いている人……いろんなお年寄りがいる。みんなそれぞれの健康法であるそうな。かなり妙なことをやっている人もいるのだが、誰もお互いのやっていることを気にしてない、というのがまたいい。★★★☆☆。

追記

  こんなことを書くのは本当に失礼極まりないんだけれども、今日はもう一つ映画館の座席で居心地が悪かったことがある。
  私の隣に座ってらした初老の紳士は、ううむ、体臭がかなりきつかったのだ。いわゆる加齢臭というのかな、それにタバコの匂いも混じったような。人間誰しも体臭というのは多かれ少なかれあるものだし、年かさが増せばいたしかたない種類のものでもあるので、ホント、どうしようもないとは思うのだけれど*2……満員の映画館でどこにも行きようがない状態で二時間十二分の映画を見るのは、正直に言ってやはりちょっとつらい。
  でも考えてみたら、昔は映画館でこんな思いをした記憶がない。これは自分が以前よりも病的なまでに潔癖になってきているからなのだろうか、それとも化粧品メーカーあたりが「加齢臭」だの「介護臭」などという言葉を「開発」したおかげで、それまで意識しなかったものが具体的な知覚になってしまったためだろうか。

*1:でもまあ葛藤があって当たり前だとも思うけれど。亀田三兄弟とその親父さんのように熱いタッグを組んでいるような関係って、大きなお世話だけれど気味が悪い。あ、これは悪口でした。

*2:タバコの臭いはどうにかしてください。