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中国は社会主義で幸せになったのか

中国は社会主義で幸せになったのか
  タイトルに惹かれて買った。タイトルからして、最近あまた出版されている挑発的な中国批判書と同工異曲なのだろうなと思ったのだが、意外にきまじめな本だった。さまざまな政治体制改革や政治革命が次々に起こった清朝末期から現在までの中国近現代史を時系列的に概説している。
  この本が類書とおもむきをやや違えているのは、社会主義・共産主義マルクス主義の成り立ちをフランス革命・産業革命あたりから説き起こして丁寧に解説するほか、国共合作時の国民党の役割にも多く紙面を割いていること。中華人民共和国の「正史」にことごとく批判を加え、かの国の実態は封建王朝だと喝破する姿勢は、ユン・チアンらの『マオ』や高島俊男の『中国の大盗賊・完全版』にも通じるものがある。
  社会主義市場経済という一種の「語の矛盾」を突き進む現在の中国。気の遠くなるような人命と資源の浪費を経てここに至ったこの国に対して、孫文の目指した共和国がそのまま続いていたら、あるいは蒋介石が政権を取っていたら、何十年も早くその状態に到達して、そのぶん人命も資源も犠牲ははるかに少なかったはず、と著者は言う。あまつさえ、清朝がそのまま存続していたとしても、はては袁世凱の政府であっても、はるかに早く現在のような社会体制を出現させていたはず、とまで言うのだ。う〜ん、そこまで言うか。やっぱりけっこう挑発的かもしれない。