インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

まとめ気味に訳す

  通訳スクールの訓練。同通訓練では殺意を覚えるほどの早口な発言者が登場して、スピードについて行けずほとんどお手上げ状態。それでもこの講演を実際の現場で聞きつつ、通訳者のデリバリーも聞いていたというクラスメートの一人によると、当日同通を担当した通訳者さんは要点をつかんでそれほど違和感なく訳出していたという。はああ、わが身を振り返ると日暮れて道遠しというか何というか。

  ふだんニュース番組などの音声を利用して練習しているが、ニュースは冗語やポーズがなく、びっしりと情報が詰まっているから、こちらも往々にしてついて行けなくなる。
  それでフリーソフトの『聞々ハヤえもん2』を使って、音程を変えずに速度だけ八割〜七割に落として練習したりする。これだと、まあなんとかかんとかついていくことができる。で、この速度に慣れてきたら、徐々に速度を上げていこうという戦略。
  スクールの講師からは「それもいいけれど、文字原稿をサイトラしながら、大づかみにまとめながら訳す練習をもっとやってみたら」とのアドバイスを頂いた。テキストを速読しつつ、段落ごとに要約しながら声に出していくのだ。同通の訓練だからインプットは音声でなければ、という思い込みがあったのだが、こうした練習方法も同通の訓練には有効なのだそうで。
  確かに聞こえてきた端から訳していくのはかなり疲れるし、文章が支離滅裂になりがちだ。耳からのインプットにせよ目からのインプットにせよ、頭の中に段落ごとの情報を大づかみでプールし、簡潔にアウトプットしていくという方法は同通の重要な技術のひとつだと思う。分かっていてもなかなかうまく行かないが。
  実は先回、通訳の特別授業に参加させてもらったときもこの練習をやって、何だかすごく楽しかった。何から何まで全部訳そうとしなくていいのだ、というのが分かって気が楽になったというか。仮にスピードの速い発言に追いついて訳せたとしても、訳出だって早口になるし、聞き手にとってはかなりのストレスになることは間違いない。それよりは要点をつかみだしてゆっくり伝えた方が結局通訳の目的にもかなうということだ。
  しかも要点をつかむことと情報をどんどん切り捨てることがイコールではないのがポイント。参考として香港返還時のチャールズ皇太子のスピーチを複数の通訳者が同時通訳したものを見せてもらったが、ある段落の同じ内容を通訳者Aは227字、通訳者Bは125字で訳出していて、しかも両者の情報量にはほとんど違いがなかった。