インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

国民年金

  友人が電話をかけてきた。かなり年上の友人だが古いおつき合いだ。いわく「大学生の娘が『アルバイトで結構稼いでいるし、社会への貢献として国民年金保険料を今年から自分で払う』と言っている。これまでは免除申請をしていたのだけれど、どう思う?」

  何で私なんぞに聞いてきたかというと、私がその昔社会保険関係の出版社に勤めていたことを知っているからだ。社会保険制度は年々変わっているから、私が当時学んだ古い知識などほとんど役には立たないのだが、まあ年金制度は一般にかなり分かりにくい代物になっているから。
  国民年金は二十歳以上の国民全員が加入することになっているが、学生の間は支払い免除の申請ができる。免除期間は将来の年金額算定の際にも加入期間として扱われるから、収入の少ない学生さんにとっては助かる制度だ。もちろん年金額はその分少なくなるが、あとから(就職してお金に余裕ができたら)遡って収めることもできるし、最低二十五年の加入期間が無ければ年金そのものが受給できないので、加入期間確保という意味からも免除申請はしておくべき。申請しないと単なる未加入になってしまう*1。もっとも昨今はこの未加入がものすごい数に膨れあがっているのだけれど。
  で、免除申請できる期間中にもかかわらず今年から年金保険料を払うという娘さんに対し、友人は「何か積極的な意義を見いだせる?」と聞いてきたのだ。
  積極的な意義かあ。
  1.将来の年金額がほんの少々増える。ただしもともと四十年保険料を支払い続けた人の満額でも七万円か八万円くらいでしかないから、学生のうちに一年か二年振り込んだ分なんてほんの些細な差にしかならないが。
  2.社会保険庁のお先棒を担ぐわけじゃないが、まあ「世代間扶養」の美しい理想から言えば、若者がアルバイトにしろ結構稼いでいて、それで現在の年金受給者を支えるという思想は別に否定することじゃない。それで娘さんの気持ちが清々しいものになるんだったら別に周りがとやかく言わなくてもいいかなと。
  でも……。
  1.どうせあと数年もすればたぶん就職して、そうなれば嫌でも保険料を取られるようになる。そうなったら国民年金保険料(基礎年金)に加え、厚生年金保険料まで収入に合わせて持って行かれる(会社折半ではあるが)んだし、もとより一年二年の国民年金保険料じゃ将来の年金額に大差はつかないから(報酬比例である厚生年金の分が大きい)、そう払い込みを急ぐことはないんじゃないか。
  2.友人の家には高齢のおばあさまもいらっしゃるし、アルバイトで得たお金は世代間扶養よりまずおばあさまに還元してあげても罰は当たらないんじゃないか。
  実は昨日、私も今年度分の国民年金保険料を振り込んできた。一年分一括。一括で振り込むと何千円か割安になるのだ。
  国の公的年金制度なんてとっくの昔に破綻しているから、私が受給世代になった頃には存続しているかどうかも怪しいし、「世代間扶養」なんて全然リアリティないし、こうして集められた年金資金で厖大な無駄遣いがされていることも知っている*2
  けれど出版社で社会保険庁などのパンフレットを作って、みずから「年金は世代と世代の助け合いです」なんて文章を無数に書き散らしてきた手前、実は国民年金払ってませんでしたというのは何となく卑怯というか、まあ単純に人に後ろ指さされるのが煩わしいというかなり消極的な理由で振り込んでいる。あとまあ、「金は天下の回りもの」という言葉がけっこう好きなので。やれやれ。

*1:あと、免除申請しておくと、万一身体が不自由になってしまった時に受け取れる障害基礎年金の保険料納付済み期間に参入できる。保険料納付済み期間が全加入期間の三分の二以上ないとこれすら受け取れない。←社会保険庁が年金加入を呼びかける時の常套句。

*2:出版社時代、官庁やその外郭団体などに出入りしていた時に目の当たりにしたが、もうほんっっっっっっっっとにものすごい無駄遣いがされている。特に年金資金で造られた箱ものと天下り役人。役人のことを書き出すと血圧が上がるのでやめておこう。