インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

カンテ・グランデ

  大阪で数時間ほど自由時間ができたので、梅田界隈を歩く。
  美術予備校に通っていた頃、一年間だけ大阪に住んでいたことがあって、梅田周辺はかなりよく見知った「テリトリー」だったのだが、ずいぶんと変わったもんだ。阪急百貨店も取り壊して新しいビルになるという。天井がアーチ上になった、あの特徴のある古めかしいコンコースもなくなってしまうそうで、何だかもったいない気がする。
  当時、北浜にあった予備校からの帰り、西天満あたりの現代美術ギャラリーをはしごしながら、ぶらぶらと梅田に戻ってくると、たいがい泉の広場にあった「カンテ・グランデ」という喫茶店に寄り道していた。インド風のチャイや紅茶が「売り」で、インドの織物や雑貨が所狭しと飾られ、インド音楽や現代音楽が流れるかなり特殊な雰囲気のお店だった。当時、ずいぶんとカンテ・グランデふうのライフスタイルに傾倒したものだ。
  カンテ・グランデの本店は梅田の北、中津の住宅街にあって、ここにもよく行った。たぶんオーナー氏の自宅を改装したのだろう、モダンで広々とした店内はいつも客がまばらで、庭の樹木を眺めながら怪しいスパイスの入ったチャイを飲むのが好きだった。
  今回ほとんど二十年ぶりくらいで中津のカンテ・グランデに行ってみたら、オーナー氏の自宅がなくなっていて、高層マンションが建っている。ああ……と落胆しかけたその瞬間、「カンテ・グランデ」の看板を発見。なんと、マンションの地下に移って今でも営業していたのだ。
  推測するに、オーナー氏が自分の土地にマンションを建てたのだろうな。そして自分もそのマンションの中に収まったのだろう。朝の早い時間でまだ営業しておらず、チャイを飲めなかったのは残念だが、記念に写真だけケータイで撮ってきた。