インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

いいなあ。

  家のそばにスーパーマーケットがある。店の前の自転車置き場は世田谷区、店自体は杉並区に属するという珍しい(?)スーパーだ。半地下になっているこの店の入り口付近には、安っぽい樹脂製のテーブルと椅子が何組か置かれてあって、よく近所のお年寄りが井戸端会議をしたり、学生たちがたむろしていたりする。
  深夜まで営業しているこのスーパー、私も夜遅く買い物に行くことがあるのだが、ときどき女性が一人でテーブルのひとつに陣取り、スーパーで買ったとおぼしきポテトサラダなんぞを肴に、ビールやチューハイを飲んでいる光景を目にする。それほどじっくり観察しているわけではないが、年の頃はそうだなあ、三十代前半。服装もこざっぱりした普通の感じだし、大きなお世話ながらどうしてこんなところで一人深夜の酒盛りをしているのかと首をかしげたくなるような女性だ。
  でも彼女はとても幸せそう。小説の単行本を片手に、缶ビールを飲み、総菜をぱくぱく食べている*1。ホント、マンガなら背景に「ぱくぱく」と擬音がつきそうなくらいの「ぱくぱくぶり」だ。そんな幸せそうな彼女に、私もなんだかほんわか幸せな気分になる。
  “変態(ビェンタイ)*2”と言われるかも知れないけれど、私は昔から人がものを食べている姿がとっても好きだ。特に女性が、目を輝かせてぱくぱく食べるのを見ているのが好き。
  このあいだも渋谷のとあるファストフード店の前を通りかかった際、むくつけき男性たちに混じってひとり幸せそうにソースカツ丼をほおばっていた若い女性に目が釘付けになってしまった。その女性は、箸にはさんだ大きなカツをいとおしそうに眺めたのち、それこそ「ぱくっ」という音が聞こえそうな勢いでかぶりついたんだよ。ああ、なんという愉悦*3。食欲旺盛な女性っていいなあ。
  ……って、観察している私も私だ。はたから見るとそうとう怪しい雰囲気だったかもしれない。す、すみません。

*1:けっこう観察してますな、私。

*2:台湾ではそのまま“bian4 tai4”という。

*3:『ブルータス』入ってます。