インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

翻訳奇譚集

  ずっと以前、こんな文章の翻訳依頼があった。
  「お客様から来たメールなのですが、翻訳ソフトにかけてもさっぱりわかりません。よろしくお願いします」
  ほほう。私たち翻訳者を使うのは翻訳ソフトの「次善の策」なのだなあとある種の感慨にふけりながら本文を見ると……

議冉彰巖甥選恊:
冉巖白選琵込櫛鴛琵甥曝同勺協葎議圷酎衛繁.泌嗤個賜温俐割厘繍氏式扮断議狼低断選.械掲仍湖.*1

  ……いや、これはただの「文字化け」ですから(^^;)。



  またある時はこんな文章の翻訳依頼があった。

在以感受奥云气気,友物奥云精神為主題的大躾次活動中,感謝悠的和及参与。*2

  これは文字化けではない。だいたい言いたいことは分かるが、でも非常に奇妙な文章だ。
  最初にある“奥云气気”は“奥运气氛(オリンピックの息吹)”だろう。
  最後の“悠的”は“您的(あなたの)”に違いない。
  あと引っかかるのが“友物”“躾次”“和及”。こんな単語は北京語にはない。「躾」など日本の国字だ。じーっと見つめることしばし……わかった。前後から判断するに“发扬(発揚)”“联欢(聯歓)”“积极(積極)”だ!
  ここから推理。この文章を書いたのはいったいどんな人物か。

1.

  少なくとも北京語ネイティブではない。日本語の漢字とかなり字形の異なる簡体字ばかり間違えていることから見ても、日本人ではないか。

2.

  一方で簡体字ではない“為”“題”“動”などを使ってもいる。つまりこの文章は、北京語を解さない日本人が日本語の漢字を使い、簡体字の原文を見ながらまねて打ったのだろう。

3.

  しかし、文章を打ったのが北京語を解さない日本人だとして、その人が原文の“题”を見て“題”を打てるのはまだしも、字形の違いが大きい“为”や“动”を見て“為”や“動”を打てるだろうか。

4.

  それに“奥云”は、ピンインが“运(yun)”と“云(yun)”で同じであることからネイティブにも散見されるタイプミスだ(ググって見るとたくさんヒットする)。

5.

  もしかしたら北京語を解する日本人が、「2ちゃんねる語」みたいなノリで冗談半分に作ったんじゃないかとも思われw

*1:頭のいいかたに「解読」されてしまわないよう、適当にスクランブルかけてます。

*2:これも適当に変えてます。