インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ヴェラ・ドレイク

  こんなに深く感動した作品は久しぶり。毎回引き合いに出して本当に悪いと思うが、こういう作品を見て、一方で昨今の某国映画を見ると、果たして両者は本当に「映画」というひとつの芸術のジャンルに属しているのだろうかと疑いたくなるくらい。映画という表現に対する姿勢と取り組み方、演技というものに対する飽くなき追求、人間に対する洞察の深さと鋭さ――どれひとつとってもかなわない。
  もちろん、映画に対する資本の投下方法や制作環境がまったく違うだろうから、単純に比較するのは不当かもしれない。それに私には顔なじみのない俳優たちだが、イギリスではそこそこ有名な人たちらしいので、イギリス人が見たら「ああ、あの俳優だー」とリアリティをそぐような部分もあるのかもしれない(私がよく見知った日本人俳優の演技に興ざめするように)。
  だがこの映画は、冒頭の数分で登場人物たちの圧倒的なリアリティに打ちのめされる。日常の何気ない営みを演じているこの俳優たちは、いったいどれだけのリサーチと人物の構築と、そして実際の練習を積んできたのか――それを一挙に了解することができる。職業俳優がこの映画のために演じているとはとても信じられないほどだ。もちろんそこには優れた演出とカメラワークも一役買っているのは言うまでもない。すばらしい映画。
  ストーリー自体はとても単純なので、感動を損ねないためにもネタバレになりそうなことは一切書かないでおこう。★★★★★。
  http://www.veradrake.net/
  ↑公式サイト――でもネタバレどころかこのサイトには何から何まで書かれてあるので、できれば映画を見てからアクセスしたほうがよろしいかと(^^;)。