インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~


  リリー・フランキーという人の本を初めて読んだ。私はぜんぜん知らなかったけれど、イラストレーター・コラムニストとしてナンシー関に匹敵するくらいの実力と人気を持つ人なんだそうだ。
  この本は自叙伝的に自分のこれまでをなぞる一方で、母親や家族に対するちょっと信じられないくらいの愛をつづっている。
  著者は私とたぶん同い年かひとつ違いで、大学も一緒だ。くわえて故郷が北九州。私も故郷ではないが父親の実家が北九州なので小さい頃から何度も行ったことがあり、小説の細かなディテールにずいぶんはまりこみながら読んだ。

そんなイカサマはババアの駄菓子屋に限らず、たこ焼き屋のたこ焼きには、たこだけでなく「チクワのブツ切り」が入っていたが、もう、この町では誰もそんなことを指摘する人はいなかった。

  そうそう! 昔はあったなあ、そういう「イカサマ」。私が遭遇したのはたこのかわりにコンニャクが入ったたこ焼きだった。

そして、美術大学というところは特殊な価値観の中、学生が温度の低い優越感を抱いている。もう、そこに入学しただけで自分が芸術家にでもなったような気分でいる。

  痛い……。「温度の低い優越感」を私も持っていたと思う。しかも学生の間にさえ「温度差」はあって、例えば私など、教職課程を取る友人に対して「ケッ、そんなんで『アート』できるのかよ」などと思っていた。今考えるとものすごく幼稚で傲慢な態度だなあ。
  ただ、小説としてこの作品を人にオススメできるかというと……少なくとも本の帯に書かれているような絶賛の言葉は私には書けない。