インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

翻訳者の“SOUL”。

現地スタッフのオタク的な意気込み、ということでもうひとつ。
たまに日本のアーティストのCDを台湾で買うことがある。日本で買うより安いこともあるが、多くが台湾限定発売盤なので、特別に歌詞の翻訳がついてきたりして楽しいからだ。
まあレコード会社*1やアーティストにもよるのだが、たいがい歌詞の北京語訳が別についている。歌を聴きながら北京語の歌詞を追っていると、絶妙な翻訳があって「おぉ〜!」とうなったり、ちょっとした誤解があって「わはは」と苦笑したり。もちろん詩の翻訳くらい難しいものはないし(というか、ほとんど不可能だと思う)、ひとさまの翻訳をあげつらうなんてそんなおこがましいこと、とても私にはできないが。
で、今回買ったのは“靈魂出竅(SOUL’d OUT*2”のCDとDVDがセットになった“台灣獨占影音紀念盤”。私はあのDiggy-MO’って人の「みょんみょんみょ〜ん」という感じの声が好きでよくモノマネしたりしているのだが、まあそれはさておくとして、例えば私の好きな『Flyte Tyme』という曲から。

ねぇ おしえてよ束の間の涙明け暮れても
あれよ あれよ 気づけば時間だけが経ってたなんてよくある話
はぁっ?って感じじゃんダメじゃんじゃなくて
Nah全てを注いで貫こうステージは宇宙 大地蹴ってそう
呼び合う星達が招くよC’mon! One time for ya mind It’s like that
WA! シュビドゥビドゥバFeel me tonight

いったいこれをどう北京語に訳せというのか。
というか、ラップの歌詞を訳すこと自体にムリがあるといえなくもないじゃんじゃなくて(笑)。
こんなの私は仕事としてはとても受ける勇気がないが、そこを台湾の翻訳者はがんばってらっしゃる。

嗯 告訴我吧 即使日往夜來有成串的淚珠
那個 那個 常聽說在意的話就用時間來解釋
感到搞不懂發出的“啊?”也不是不行
Nah 全力貫注 舞臺是宇宙 衝破大地 沒錯
吸引互相輝印的星星們C’mon! One time for ya mind It’s like that
WA! 咻比嘟比嘟吧Feel me tonight

苦労してらっしゃる……(^^;)。が、これを外野からあれこれ、たとえば「“那個那個”と訳されている『あれよあれよ』は、実は『あれよあれよといううちに』という意味なんだけどなあ」などと指摘するのは野暮というものじゃないか。
「はぁっ?って感じじゃんダメじゃんじゃなくて」を“感到搞不懂發出的“啊?”也不是不行”なんて泣かせる。歌全体からいくと本来的には「ダメじゃん」のあとで意味が切れるのではないかとか、そんなことはもはやどうでもよくて、ただただ「ここまで訳してくださってありがとう!!」と感謝したくなる。
このアルバムはこんな調子の歌詞が細かい文字で十数ページもあるのだが、それを全て訳した膨大な北京語版歌詞カードがついているのだ。「なんとか台湾のファンに伝えたい!」という熱い気持ちがなきゃ、とっくにちゃぶ台をひっくり返しているところだ。
http://www.sonymusic.com.tw/jpop/souldout/

*1:今時「レコード」会社ってのもナニですね。何かほかのいいかたはないものかな。「制作会社」「CD発売元」「音楽出版社」「音楽プロダクション」……う〜む、どれもいまひとつ。

*2:“靈魂出竅”というのも凄みのある訳だ。これってもともとはエクトプラズムがほわほわっと出てくるような、「幽体離脱」みたいなのを指す言葉じゃなかったか。