インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

紐約行(4)

朝、上り(uptown)の地下鉄に乗るも、急行で一気にハーレムまで行ってしまう。せっかくだから外に出てみたら、またずいぶんと雰囲気のちがう街並みだった。ニューヨークは地下鉄の駅を出るたびに、さまざまな雰囲気の街並みに出会う。日本などではあまり味わえない感覚だ。いろいろなエスニックが住み分けているからなのか、階級が日本よりハッキリと分かれているからなのか。
蒸気でよくわかりませんが、そこここに蝶がいます。下りの各駅停車で戻って、アメリカ自然史博物館に行く。アメリカの風刺マンガなどで、よく大きなジオラマがいくつも並んだ展示風景が出てきて、例えば「人間」というプレートのはまったジオラマを動物たちが見物している、などという典型的な諷刺手法があるが、ここは要するにそうした古典的ジオラマ式展示の科学博物館だ。
チケット売り場でいろいろと聞かれ、つたない英語であわわわ〜となる。どうもいろいろなイベントや体験アトラクションがあって、それぞれを時間指定で予約しなければならないらしい。見かねた受付のおねえさんがいろいろていねいに紹介しながら、うまいぐあいにいくつかの予約を組み合わせて作ってくれた。パンフレットの地図にマルをつけて、それぞれの時間まで書いてくれて、「最初にここ。で、つぎにここをまわって、三十分後にこのホール。いい? わかった?」。はい、なにからなにまですみません。
で、まず受付のおねえさんイチオシの“The Butterfly Conservatory”。昆虫の苦手な、それも蝶や蛾の鱗粉なんか触ろうものなら卒倒しかねない私にバタフライ〜?*1
行ってみると、こぢんまりとした温室の中にさまざまな熱帯植物があって、貴重な蝶たちが放し飼いになっており、そのなかに入って蝶さんたちとスキンシップを楽しみましょうというナイスな企画。かなりたじろぐが、受付のおねえさんの「いいのよぉ〜♡」という笑顔を思い出し、警備員に伴われて二重扉を抜け(貴重な蝶が逃げないように、なんだそうだ)、温室内へ。
むわっとかなり蒸し暑い。壁にかかったガラスケース内には蛹がずらっと並び、続々羽化中。素敵すぎる。本当にたくさんの蝶がいる。モンシロチョウやアゲハチョウみたいなわりあいスタンダードな蝶もいるが、中には限りなく蛾に近い(としか私の眼には見えない)茶褐色のとか、パンダみたいな白黒まだらのとか、羽根にでっかい目玉みたいなのがグロテスクで金縛りにあいそうなの(私は威嚇された小鳥か)とかが乱舞している。
小さな子供たちがとても喜んでいて、後を追いかけたり、指を伸ばして蝶に止まってもらおうとしたりしている。なかなかかわいらしい。と、後ろにいた夫婦が私を指さすからなんだと思ったら、頭の上を大きな白黒ぶち模様の蝶(あとで調べたらPaper Kiteという名前だった)が舞っていて、それがいきなり頭の上に止まる。「リボンみたい!」と言われるが、あまりうれしくない。飼育員の手前、むげに追い払うのも失礼な気がして、そのままにしておいたらもう一匹同じ種類の蝶が止まる。「あなたの髪がお気に入りなのね、きっと」などと言われるが、かなりうれしくない。
最後に飼育員が、大きな羽毛のついた長い竿のような道具を使って、とある葉っぱの上に止まっていた蝶の羽根を開かせて見せてくれた。目の覚めるような群青色。これはさすがに美しい、と思った。二重扉を抜けてようやく外に出る。かなり汗をかいていたのは、温室のせいばかりじゃなかったと思う。
そのあとプラネタリウムで“Space show”を見るが、あまりよく覚えていない*2。そのつぎの“Totems to turquoise”とかいう特別展示も、ぜんぜん覚えていない。

*1:というか、説明されているときに気づけっての。

*2:太陽系のことを“The solar system”というなんて、初めて知った。太陽熱温水器みたい。